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アンターノ
Antano アンターノ
元々、サグランティーノはパッシート(甘口)用品種として植えられていた。高い糖度を持っているがタンニンが豊富で気難しい品種である為、陰干しし甘く飲みやすくしていたのだろう。
セッコ(辛口)が造られるようになったのは80年代後半と歴史は浅い。90年代に入るとアルナルド・カプライが現代風にアレンジしたサグランティーノ・ディ・モンテファルコを造り人気を獲得。サグランティーノの知名度は一気に高まり、多くの生産者がセッコを造り始めた。
モンテファルコから1kmほど北西の丘、ベヴァーニャという町に位置するミルツィアデ・アンタノ。モンテファルコの老舗のワイナリーであり、ウンブリアには何処にでもある極普通の農家。何も特別なことはない。元々は小作人として働いていたが、現当主フランチェスコの父ミルツィアデが1969年に30ヘクタールの土地を購入。ワイン造りとキアーナ牛の放牧を始めることとなる。19755年、モンテファルコ・ロッソとサグランティーノ・パッシートを醸造開始、80年代にはサグランティーノ・セッコの生産も始め、ボトリングまで行うようになった。
サグランティーノは90年代のブームで随分と世界基準の味わいに近づいたのかもしれない。しかし、本来のサグランティーノの滋味溢れる野性味を素直に楽しめる機会は確実に減ったと言える。
世界中でウンブリアの極一部でしか表現することができないサグランティーノというワインの個性、圧倒的存在感は今、途絶えようとしているのだ。
『今では本物のサグランティーノは少なくなった。僕が知る限りサグランティーノを真剣に追求しているのは他にアンタノしかいないよ』と語るのはジャン・ピエロ氏(サグランティーノの第一人者パオロ・ベアのオーナー兼醸造責任者)。
パオロ・ベアのワインにも感じるが、アンタノのワインは強さの中に柔らかく成熟した果実を持っている。大きく強いワインでありながら、しっとりとして上品な質感。
フランチェスコ氏曰く、『粗野で荒っぽく無作法な喰えない奴』というサングランティーノ。
『女性と同じでゆっくり時間をかけて熟成することによって丸く、上品にまとまり、成熟した色気を放つようになる』のだそう。
定年を迎え、時間にゆとりが出来たフラヴィオは、自分の生活の近くにある自然、草木や花、土地の豊かさに改めて気付き、 そしてその豊かな自然と葡萄との繋がりがいかに強いかに気付いた事が、彼の人生の大きな転機になったそうです。フィリッポとエリカという同志を得て、改めてこのベドゥッツォという土地の素晴らしい自然の力が多くの人々に伝わるワイン造りを目指します。素朴で飾らない旨味と、個性豊かな果実味と味わい。田舎のゆったりとした時間が一緒に詰めこまれた素晴らしい生産者です。
豊富なタンニンと黒胡椒や鉄、丁子、ジュニパーベリーのニュアンス。押し寄せるような濃厚な果実。若いうちはアタックの強さに奥が感じられないが、時間と共に花開きサグランティーノにしかない個性を感じさせる。
『最近のフルーティーでドリンカブルなサグランティーノには全く興味がない。長期の熟成に耐えうる、がっしりした体躯のワイン、この地の伝統的ワインを造るんだ』