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ボワ・モワセ
Bois Moisset ボワ・モワセ
フランス南西地方(ガイヤック)で、代々ワイン造りを行う蔵元。1956年の大寒波でブドウのみならず、樹木まで凍り経営難に陥り、それ以降は収穫したブドウを農協に売り生計を立てていました。現当主フィリップ・マッフルは、農業学校を卒業した後、選んだ研修先は全て有機栽培を取り入れた農家ばかり。1993年にドメーヌを継いだ際に有機栽培へ転換。2007年にはビオディナミへ転換。
自然なワイン造りを周囲の環境と併せてトータルに考えており、畑のまわりには牛を放牧、とうもろこしやレンズ豆も栽培。将来的にはブドウ畑のまわりを森で囲み、ひとまとまりとなった農園にしていきたいと考えています。
フィリップは先代までの方針に関わらず、若い頃から自主的に自然なワイン造りを志してきましたが、マルセル・ラピエールやジャン・クロード・ジャヌデとの出会いが運命を決定づけたようです。
パリ1 区。「こんな蔵元出てきたのかっ!?」と行く度に驚かされてきたギャル・デ・ローブのカウンターに座っていたときのことだ。
「はいっ、これ!」話が弾んだ可愛い女性店長から、カウンター越しに薄く濁ったロゼのグラスが渡された。「んんっ?」鼻先から入り込んだ「例の風変わりな」香りに、私の全身は一気にタイムスリップしてしまった。単調なベリーでも無い。辟易とするエステル香も皆無。その代わり、挑戦的なブドウのエッセンスがこれでもか!と立ち上がる。湿った香り、熟しきったザクロ。ちょっと酸っぱさを想像するツンとした、、。「これ、いい。凄く感じるね。ジャングルみたいな、下草茫々のゴブレの畑が目に浮かぶよ」「でしょー!ワタシ達の間で、今、1 番ヒットなの!」
これが、ボワ・モワセを世に出した鬼才「フィリップ・マッフル」のワインとの最初の出会いだった。思い出す。パリにヴァンナチュールというジャンルが登場し始めたころ。いわゆる欠陥臭も混じりながら、その奥にある強烈なパワー、旨味がドッサリ果てしなく広がる味わいに、一挙にのめり込んだ。それまでの化学的に計算されて造られたクリアなワインにはない「強烈な存在感」に、ワイン界は割れた。還元臭、マウステイスト、揮発酸、、、自然な酵母による、時に風変わりなイタズラ。これらを真っ向から否定する人。ワインの個性として良しとする人。逆にこれがないとナチュラルじゃない、という妙な人(笑)。賛否両論かわされつつ、時代は進んでいく。
自然派の造り手達の研究と進化は素晴らしかった。いつしか風変わりなテイストは影を潜め、純粋に「果実の粋」がピュアに全面に出るようになった。今年春。フィリップ・マッフルから「ぜひ飲んでくれ!凄いぜ」と連絡があった。届いたサンプルボトルは、2014、2015 年。
「き、消えた、、」ボワ・モワセといえば、強烈に主張する存在感、果実の粋と同時に、あの「風変わりな」テイストも混じっている最先鋒だったのだ、それが、、「風変わりテイストが消え、ドスンと果実のパワーが迫ってくる!確かに凄い」
人は気まぐれだ。「風変わりなテイストは好みじゃない」といいながら、無くなったら「あの香りが懐かしい」といいだす。確かにナチュラルの中には、キレイになったと同時に強い旨味も減ってしまう場合もある。フィリップが、凄いぜ!といった謎は解けた。ツヤツヤの香りに進化しながらも、あのいかにもフィリップらしい強烈なパワーは微塵も消えてない!ということなのだろう。 やるな、あの男。豪快にして、超繊細。豚、馬を飼い、野菜農園をやりながらワインを造るポリキュルチュール。雨の畑で、「ちょっと」といいながら、あぜ道で立ち●●ンしていた後ろ姿を思い出した (笑)
(輸入元案内より)