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クラウス・プライジンガー
Claus Preisinger クラウス・プライジンガー
ミニマルすぎるラベルとキャップのマークに心を掴まれて初めてクラウスのワインを試飲したときは、エキスたっぷりの濁りスキンコンタクトの美味しさに衝撃を受け、初めて蔵を訪問したときは突然平原にあらわれた宇宙船を思わせるミニマルなコンクリートの醸造所にも衝撃を受けました。殆どのワインがサンスフル(亜硫酸無添加)、無清澄・無濾過で造られていますが、綺麗でバランスがよくどれも大変美味しくいただけます。同じブルゲンランド州のグート・オッガウのワインを飲んでオーストリアの葡萄品種を好きになった方にもおすすめです。(輸入元案内より抜粋)
ワイン造りの最大の魅力は素材を使って文化を表現できること。
ワインメーカーになっていなければシェフか建築家になりたかった。
1980年、ハンガリー国境そばのブルゲンラント州の州都アイゼンシュタットに生まれる。実家は混合農家。「家業とはちょっと違うジャンルの農業、かつ家から離れられる」という理由からウィーン近郊の醸造学校へ。米ソノマ・ヴァレーのワイナリーで研修の後ブルゲンラントの重鎮ハンス・ニットナウスのアシスタント・ワインメーカーを務めながら、2000 年初ヴィンテージで 自分のブランドを立ち上げ、〈Paradigma2000〉が、ワイン専門誌『Falstaff』の赤ワイン(ブレンド)部門で2 位に。2004年独立。2006年からビオディナミに転向(ビオディナミ団体Respektメンバー)。2015年から、ナチュラル・ワインのイベントRAWに参加している。
クラウス曰く「僕のワインに必要なのは、葡萄と僕。以上!」。もちろん使うのは自分の育てた葡萄だけ。その土地の個性を反映した葡萄を育てたいからと、5つの村にまたがる64か所もの区画(7アールから2haまで)をランドローヴァーで、日々駆け回っています。
畑があるのは、ウィーンから南東方向に車で約1時間半、ハンガリーとの国境近くのブルゲンラント地方。ヨーロッパ最大の内陸湖ノイジドラー湖の北側で、DAC(Districtus Austriae Controllatus。原産地統制呼称)でいえば、アルプス山脈の東端にあたるライタ丘陵に向かってスロープが続く〈ライタベルク〉(プルバッハ、ブライテンベルク、ヴィンデンの3つの村)と、プスタ(ハンガリー平原)の一部である平地の〈ノイジドラーゼー〉(ゴルスとヴァイデンのふたつの村)にあたります。おおまかにいうと、前者はライムストーンやシスト土壌でエレガントな葡萄、後者はサンディロームに小石やチョークが交じる土壌でパワフルな葡萄ができるそう。
90%が黒葡萄で、割合の多いものから順に、ブラウフレンキッシュ、ツヴァイゲルト、ピノ・ノワール、ザンクトラウレント、メルロ。白葡萄はグリューナー・ヴェルトリーナーやピノ・ブランなどを栽培。ビオディナミの生産者団体リスペクトに加盟する前から、ルドルフ・シュタイナーの理論を指針としていたクラウスは、「葡萄は人間以上に自分(葡萄自身)を知っている。だから必要以上に手を掛けず、プロブレムがあったときだけ対処する」をポリシーとしています。
クラウス・プライジンガーに初めて会ったのは2010年春。オーストリア最大のワインの祭典ヴィエ・ヴィナムに行くにあたり、おもしろい生産者を訪ねたいと探したところ、ワイン専門誌『Falstaff』などの華麗な受賞歴で“ライジングスター”と評判の若手生産者に興味が湧いたのでした。
教えられた住所を頼りに、ハンガリー国境近くノイジドラーゼー地区へと車を走らせると、目の前に忽然と現れたのは、安藤忠雄?みたいな巨大なコンクリートのワイナリー。迎えてくれたのは、挑戦的な目をしたジーンズ腰ばきの30歳。ワインボトルのラベルは、白地にグレイの文字で“Claus”と書かれているだけ。すべてがミニマルでカッコイイけれど、オレ様的オーラがちょっと?? と思ったものでした。
作柄のよい年だけ造るブラウフレンキッシュ100%のシングルヴィンヤードのワイン(ビュール2007)は、バラやスイカズラなどの華やかな香りと、はつらつとした酸味が印象的ながら、薄い赤好きの私には、後味のどっしり感が気になりました。
しかしフランスのヴァン・ナチュールとの出会いから、クラウスのワインはどんどんナチュラルに。そしてしだいに頬がふっくらし、いつしか性格も円く付き合いやすい人になっていきました。ワインがナチュラルになった理由は、「コンヴェンショナルなワインは退屈だから」とのこと。ワイン造りも人生も、直感を大事にするのがクラウスです。
畑仕事は「超」ストイック。コンポストまで自作する生産者はなかなかいま せん。彼が「オレの黒い“金”」と呼ぶのは、父の農場の馬と国立公園の牛の糞、それに湖の葦を混ぜて造ったコンポスト。1haもの空間に広がる熟成中の堆肥の前に立ち「Man and shit!」と満面の笑顔を見せていました。
ワイン造りの最大の魅力は「素材を使って文化を表現できること。ワインメーカーになっていなければシェフか建築家になりたかった」そうです。常に新しいアプローチで人を驚かせたいというクラウス。いまはロゼの可能性を探っているとのこと。楽しみですね(ライター中濱潤子)