Frank Cornelissen フランク・コーネリッセン
この仕事をやっていて、一度持たれてしまったイメージを覆すことというのは、非っ常に難しいことなんだと痛感させられたのは、やはりフランクのワインを通してということになるのでしょうか。
デビュー当初は、ワイン界のアナーキスト扱いだった彼も、いつの間にかエトナを代表するテロワリスト(Terroirist、実際には存在しない言葉ですが、テロワールを体現する人という意味の言葉だと何となく認知されているような…。間違ってiが抜けちゃったら、テロリストになっちゃいますね…。)の1人として、世界中で認識される存在となっています。なにせ、ワインをリリースさせる前からの付き合いですし、初期の頃は生産量の半分くらいを買っていましたので(まー、我ながら良くやったと思います…)、彼の今現在のエトナというゾーンとワイン界で築き上げた立ち位置には、非常に感慨深いものがあります。とはいえ、ワイナリー発足当初から今現在に至るまでに、基本理念とそれに従った畑&セラーでの作業の仕方が大きく変わったということは一切なく、本当に微調整程度の積み重ねだけが、発足当初と現在のワインの間にある大きな味わいの差を生み出しています。
テロワールを体現したワインであること、それを実現するためには、農法的にも極めてナチュラルであるべきで、基本ボルドー液さえも使わず、完熟したブドウを用い、白、赤、ロゼの区別なく乳酸発酵が完全に終了するまで皮や種と一緒にして醸し状態とし、ブドウ由来以外の風味がワインに付くことを嫌い、木樽は用いず、醸造&ボトリングの際にも酸化防止剤を一切使用しない…この辺りが不変の理念ということになるかと。
エトナ山の麓で2001年にワインを造り始めた当初、彼が理想目標として掲げたワインは、“(火山)岩が液体化したかのようなワイン”でした。果実味などという、分かりやすい味わいなど全くなく、ミネラルだけで構成されている、完全に醗酵&熟成(酸化と熟成の境目を狙った)しきったワイン…マグマ1(2001)は、デビュー作にして、当時のフランクの理想形を具現化したようなワインで、初っ端から自分が思い描いているものを実現させられるセンスに驚愕したのを記憶しています。本当に難解なワインでしたし、友達造り手の間でも賛否両論が激しく飛び交いましたっけ…う〜ん、それも懐かしい!!
2003年、収穫するブドウよりも地面に捨てているブドウの量が多いことに気付き(笑)、まあ捨てるくらいなら、試しに軽めのワインでも醸造してみるか!ということで生まれたのがコンタディーノ。飲み手に、心の準備覚悟さえ要求するかのような高いテンションを備えたマグマやモンジベッロ(現ムンジェベル)のようなワインを毎日飲みたいわけではない、特に畑作業などの肉体労働で心身ともに疲れた時には、そんなワインと向き合う事自体が重いということに気付いたフランク、捨てるはずだったブドウから生まれたコンタディーノの持つ潜在的な面白みに着目します。あくまでも醸造哲学的には、マグマ&モンジベッロと同じだけれども、もう少し果実味やイージーさをフィーチャーしたワインとしてのコンタディーノの醸造方法を模索し始め、4(2006年)で今現在と同じようなスタイルに辿り着きます。
時を同じくして、マグマ5(2006)&ムンジェベル4(2006&07)あたりから、かつてのフランクが言っていたような、“火山岩を飲んでいるかのような液体”から、果実味とミネラルが高次元で融合した、普遍的な美味しさを持ったワインとなっていきます。
最初の方に書いた“微調整”ですが、過去と現在という形で列挙しますと、
以前
・酸化的状態での醗酵・酸化的状態での醗酵
・乳酸発酵終了後もさらに醸し状態を維持
・何もコーティング加工を行っていないアンフォラでの長期間熟成
現在
・還元的状態での醗酵(醗酵中に発生する二酸化炭素で外気から遮断された環境をつくる)、徹底した衛生管理
・乳酸発酵終了と同時に圧搾
・アンフォラもコーティング加工し、全てのワインをほぼ1年以内にボトリング、ワインの移し替えなどの作業時も酸素との接触を極限まで断つような方法を採る
ぱっと思いつくところは、こんな感じです。ええええええ、こんだけ??と思われるかもしれないですが、重要な部分は、ほんとこんなもんです。
6年前くらいからリリースされるワインは、すでに“変”などではなく、ごくごく普通に美味しいワインだったのに、つい数年前までは、ヴィナイオータに鬼のように在庫がありました…。在庫があり、リストにずっと載っているということが、売れ行きにもさらにブレーキをかけるということに気が付き、半ば強引にマグマ1-4、モンジベッロ1-5くらいまでを売りさばいたのが2年前、現行ヴィンテージだけをオンリストできるようになってから、
状況が激変、今では入荷したら即完売なワインとなっています。 決して偶然ではないと確信していますが、ワイン界に憤り、過激なメッセージを投げかけていた時は、ワインも彼本人も、他を寄せ付けないような雰囲気を醸し出していましたが(発言の辻斬りにあった人多数!笑)、彼のワインが落ち着いた、というかはっきりとした道筋みたいなものを見つけられた時には、フランクのそばには家族がいて、彼自身にも心の平穏が訪れたというかなんというか…。人生、ず〜〜〜っと若さに任せて怒ってはいられないし、そういう意味でロックを続けることは不可能と思うに至ったスティングの音楽人生に似ているなぁと思うのは僕だけでしょうか?(笑)(輸入元案内より)
ベルギー人のフランクは、もとはフランス・イタリアワインのエージェント。ここで紹介されている多くの造り手と交流を深め、理想の地を求めて世界中を旅したのち、ついに、ここエトナ火山の北斜面、標高900m以上の厳しい土地に、長年温めてきた自分の夢を実現する、理想の畑を見つけ出したのです。人的関与を極限まで排除し、一切の妥協を許さない強固な姿勢で、2001年から醸造を開始。すべてを投げうってマグマ造りに没頭します。無施肥・無耗起・無除草・そしてボルドー液まで否定する極端な無農薬主義(最悪の天候のため、過去3年にわたり年1度だけやむなく散布)で、恐ろしいほど凝縮されたブドウを育て上げる。セラーではもちろん二酸化硫黄完全無添加、ノンフィルター。天然の素材であっても、木という素材がワインに与えてしまうわずかな風味でさえも人的関与ととらえ、テラコッタの壺(アンフォラ)を醗酵・熟成に使用している。過激派と評される彼のワインへのアプローチは、従来のワイン常識にゆさぶりをかける根源的な挑戦であり、今、世界中のワイン愛好家・専門家のあいだに熱い論争を巻き起こしている。