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ドメーヌ・エリザベス
Domaine Elisabeth ドメーヌ・エリザベス
コニャックで有名なシャラント=マリティーム県。その県境には広大なジロンド川の河口が大西洋に向かって大きく口を開ける。ドメーヌ・エリザベスはジロンド川右岸の河口から10 kmほど内陸に入ったヴィロレ村内にある。エリザベスの畑は、大部分は南、南東のなだらかな起伏に位置し、ドメーヌに隣接するように広大な面積が広がる。気候は大西洋気候で、1年を通して寒暖の差がない穏やかな天候が特徴だが、特に、シャラント=マリティーム県は、雨雲がピレネー山脈によりブロックされるため降雨量が少なく、さらに山から吹き 下ろされる乾燥した空っ風のおかげで、大西洋に面しているにもかかわらずニースと同じくらい日照量に恵まれる。土壌はシレックス・粘土質。母岩は石灰質だが、表土が分厚いため石灰の影響はあまり受けず、出来上がるワインはフルーティでボリューム豊かなのが特徴。その他、シャラント=マリティーム県は牡蠣の養殖、シャラントのカマンベール、シェーヴルチーズが有名である。
現オーナーのブリュノ・アリヴェはドメーヌ・エリザベスの 11 代目。エリザベスの歴史は古く、初代のコニャック製造は1629年まで遡る。父親が苗木業者を経営していたこともあり、幼い頃からブドウ栽培に興味があったブリュノは、1979 年中学を卒業後アングレームの農業学校に進学し、醸造と栽培を学ぶ。当時7haあったドメーヌ・エリザベスは叔父が管理していたが、1980 年に突然の他界。叔父の家族には継ぎ手がいなく、350年の伝統が途切れることを危惧したブリュノはドメーヌの管理を自ら志願する。そして1981年ドメーヌ・エリザベスを正式に引き継ぐ。その時ブリュノはまだ17歳だった。化学農薬にネガティブな印象を持っていたブリュノは、引き継いですぐに畑をビオ農法に転換。(コニャック地方の中で彼は2番目のビオ生産者となった)。畑面積の拡大を目指した彼は、毎年少しずつ畑を買い足し、1990年には30 haまで増やす ことに成功した。さらに、1995年ブドウ農家であった妻と結婚し、妻の畑22ha を合算し計53haの畑面積を有するに至った。1997年妻の畑のビオ転換を終えたタイミングで正式にエコセールを申請。2002年に父親の苗木業を引き継ぎ、現在ドメーヌと苗木業の2つの仕事を管理している。
現在は53haの畑を5人で管理する一方で、父親の苗木業にも携わっており、ボルドーの3級からクリュ・ブルジョワまで多くの顧客を抱える。彼の所有するブドウ品種は、ユニブラン、コロンバール、モンティ、シャルドネ、ソービニヨンブラン、メルロー、エジオドーラの7種類で、樹齢は15〜45年。父親を手伝って初めてブドウの接ぎ木を行ったのが7歳、そして現ドメーヌを引き継いだのが 17歳という早くからブドウ栽培に目覚めた生粋のヴィニョロンである。そんな彼のモットーは「温故知新」と「伝統を重んじる」ことで、コニャックもワインも、昔の伝統的なスタイルを新しい設備や技術で補いながら、さらなる品質の高みに昇華させることを目指す。ちなみに、彼のドメーヌには先代のオールド・ヴィンテージ・コニャックのストックが年代ごとにあり、一番古いコニャックは1860年ヴィンテージなのだそう。彼は毎年オールド・ヴィンテージをテイスティングすることで、伝統の味わいを舌の記憶にインプットするそうだが、彼がビオにこだわるのも、かつて化学農薬のなかった時代のコニャックの味わいやポテンシャルを体感で知っているからであり、その伝統を守るための努力は惜しまない。ブリュノはドメーヌの仕事以外に、個人的な趣味として菜園があり、色々な野菜をビオディナミで栽培している。彼自身は、ビオディナミを十分理解した上で、将来的にはブドウ栽培にも取り入れて行きたいと考えている。