Domaine du Fortmanel フォールマネル
「自然だから」お勧めする訳ではありませんが、これは飲むべきシードルをご案内致します。1765年から代々受け継いだ畑と醸造所で、当時のままのシードルを作る朴訥な青年ジュリアン・フレモン。彼がこだわるのは安易な炭酸ガス注入方式ではなく、瓶内醗酵の伝統的醸造法。なんとフランス革命より前から使っている木製のプレス機を今も現役で使っているというから凄い。
今回ご案内するパー・ナチュールはドライで、きりっと引き締まった酸と凝縮感、苦味、旨味、泡立ちが全て調和した究極のシードル。これまでのシードル観を覆す味わいです。
そして見逃せないのがアペリティフ・ア・バーズ・シードルとカルヴァドスの2品。どちらもSO2無添加。アペリティフ・ア・バーズ・シードルは収穫したリンゴを直接搾ったジュースに5年樽熟成のカルヴァドス(アルコール度数65°)を1:3の割合で添加し、カルヴァドス樽で22ヶ月間熟成させた贅沢なヴァン・ド・リキュール。抜栓後劣化しませんので、時間をかけて少しずつ飲むも良し、レストランの食前・食後酒としても活躍が期待できます。
カルヴァドスは荒削りながら超ピュアな味わいで、製法は昔ながらの手作り。1本(700ml)のカルヴァドスを造るのに、およそ14?と20倍のシードルを使用。まさに少量生産の幻のカルヴァドスです。
本物のシードルとカルヴァドスを作る職人技が光る
個人的にはエリック・ボルドレをはじめ、丁寧な仕事によってつくられるシードルは大好きなのですが、以前から懇意にさせて頂いている輸入元さんが見つけ出してくれた『昔ながらのシードルはこんな感じだったんだな〜』と唸らされるシードルをご案内いたします。
リンゴの品種は古代種を中心に、樹齢は10〜100年以上の樹も含む25種を栽培。25品種は大きく分けて「甘味」「酸味」「苦み」の3タイプ。収穫期に訪問したので食べてみると、「甘味」タイプは小振りですが蜜が多く、食用よりも甘く感じます。「酸味」タイプ。こちらはまさにリンゴ酸。直線的で鋭角な酸はとても食べられませんが、香も豊か。「苦味」タイプは果実が粉っぽく、信じられないくらいに苦い。その後1時間くらい口が痺れるほどのタンニンでした。この3タイプをバランスをとりながらアッサンブラージュすることがシードルの味わいを決めるのです。
ジュリアン・フレモン氏がこだわるのは安易な炭酸ガス注入方式ではなく、一貫して瓶内醗酵の伝統的醸造法。サン・ジョルジュ・アン・オージュに所有するのがリンゴ農園12ha、45haの牛の放牧地。なんと彼が所有するリンゴ園は平均樹齢が80〜200年、洋梨においてはなんと150〜200年に及び、その中で昔ながらの自然の循環システムを大切にした農園運営を心掛けています。
すなわち、農地の中で牛が牧草を食べ糞をし、糞が堆肥となってリンゴ園の肥料となり、そして成長したリンゴの樹が作り出す日陰が牛達の格好の日よけとなり、汚染されていない牧草を食べて育った牛は最高の肉になる・・・。このような自然の循環で育てられたリンゴと、伝統的な手作りの仕込みで最高の味わいのシードルに仕上がるのです。
また、ジュリアン・フレモン氏は自然派ワインの愛好家でもあり、各地自然派ドメーヌを訪れて交流を深めて勉強しあっているとのこと。伝統的シードルは辛口が主体だったはず!と辛口にこだわり、甘口に標準が合ったAOCの認可が下りなくても自らのシードル造りに情熱を燃やしています。
ノルマンディー地方のカーン市から南東約 50km、フロマージュで有名なカマンベールとリヴァロに挟まれるようにサン・ジョル ジュ・アン・オージュ村がある。この村周辺は、ACオージュというシードルの中でも唯一アペラシオンが存在するシードルの最 適地なのだ。気候はイギリス南部の西洋海岸性気候と似て 1 年中穏やかで寒暖の差が少ない。しばしば海の影響を受け、湿度が高く雲の多い天気が続き、霧のような雨が降る。
ドメーヌ・デュ・フォール・マネルの歴史は古く、初代フレモンはフランス革命前に 80hl の土地を買い、りんご園と酪農を始め、 シードル、カルヴァドスは 1765 年から作り始めている。その時に使われていたプレス機は今でも現役で活躍しているとのこと。 それから5代に渡り一貫して酪農とシードル、カルヴァドス作りは受け継がれている。5代目のジュリアン・フレモンに受け継がれてからは土地の面積を 45haに落とし、酪農から食用牛の家畜業に替えている。シードル作りに関しては、炭酸ガス注入の安易な方法がもてはやされている中で、一貫して初代の伝統的なシードル作りを継承している。
現在はオーナーであるジュリアン・フレモンと父親、従業員の3人で 12ha のリンゴ梨園と 45ha の牛の放牧地を管理している。彼の所有するリンゴ園は平均樹齢が80〜200年、梨になると 150〜200年に及ぶ。彼らの仕事は昔から変わらず、果実園はビオロジックの方法で(彼は、「エコシステム」と呼んでいる)仕立てている。すなわち、農地の中で牛が牧草を食べ糞をし、糞が堆肥 となりリンゴ園の肥料となる。また成長したリンゴの樹が陰を作り、夏は牛たちの格好の日よけになる。汚染されていない牧草を 食べ伸び伸びと育った牛は、素晴らしい肉になる。(実際に、彼の食用肉は毎年パリの市場で高値で取引きされている。)このよう な自然の循環で育てられたリンゴと伝統的な手作りの仕込みによって、他では味わえない最高に味わい深いシードルが出来上がる。 また、ジュリアン・フレモンは自然派ワインの愛好家でもあり、各地ドメーヌ訪問をくり返しながら、交流を深めお互いに勉強し あっているとのこと。植えられている樹の80%は樹齢80〜200年の古木。ダムロ、サン・ド・ブッフ、ケルメリアン、プティ・ムセット、ディオ・ルー、サン・マルタン、 ブルダス等20種類ほど。
ジュリアン・フレモンを最初に知ったのは、実はある自然派のワイナリーからの紹介であった。「本格的な玄人が好むシードルを 作る人を知っているから、興味があれば紹介してあげる」という一言で、そんなに興味はなかったが、とりあえず「玄人が好む」 というキーワードを下にノルマンディーまで車を走らせてみた。チーズで有名なリヴァロの隣村、サン・ジョルジュ・アン・オー ジュ村に着くと、シャトーなの!?って思わせるような古風な建物と広い敷地を持ったドメーヌが見えてきた。「これが昔ながらのシードル・・・」半分不安になりながら敷地内に入ると、若ハゲの素朴な好青年が出迎えてくれた。彼が、ジュリアンだ。
まずはさっそく、ほとんど知識のないシードル作り方から簡単に説明してもらい、次に普通のシードルといわゆる本格的なシード ルとの違いは何かをじっくり説明してもらった。回りくどくて説明下手で、でも熱心な説明をする彼と、理解の悪い私との間に、説明だけで半日の時間が流れ、その中からおぼろげながら彼のコンセプトが見えてきた。
まず最初に理解しなければならないことは、現在、彼のような昔ながらの作りのシードルを探すのが困難だと言うこと。現在流通 しているほとんどのシードルはガス注入方式(コカコーラみたいなもの)か、シャルマ方式(スティルワインを大きなタンクに密 閉しその中で第二次発酵を起こさせて作る方法)で作られていて、ジュリアンのように瓶内発酵を実践するシードル生産者は数え るほどかほとんどいないそうだ。
リンゴ園も、現在は大量生産と効率化を考えて、低い垣根仕立てで密植しているところがほとん どで、彼のように収穫量をおさえてまでも質にこだわる高い木の仕立てをするものも、同様に数えるほどしかいないとのこと。僕のやっていることは時代に逆行している(笑)AOC でさえ流行の甘口に認可基準を合わせている。・・・でも、昔は、僕のような作り方をしている農家がほとんどだったのにね(笑)」 彼は、現在主流のSO2 やフィルター処理を使って、無理やり残糖分を残す方法に抵抗を感じている。「そりゃぁ、甘さを残すのにSO2やフィルター処理を使うのは楽だし簡単だ。でも、もし労を惜しまないのであれば、発酵中に何度も澱引きをして酵母の量を減らし、残糖を残して自然に発酵を終わらせることも可能でないこともない・・・難しいけどね」
彼は現にその実践者なのだが、皮肉にも SO2、フィルター処理なしで AOC の基準である残糖を残すことが困難なためしばしば認定を落とされるそうだ。
「瓶内発酵をおこなうと言うことは、見えない酵母をどれだけ残して泡を作るかという作業をおこなうことで、熟練した技術と経験がいる。ガス圧と残糖の比率は経験則で調節がきかない分、慣れていない作り手がおこなうと、ガス圧が高すぎてビンが破裂したり、逆に酵母が活発に働かないために、泡のない気の抜けたシードルになってしまう。按配が難しいが、うまく出来上がったシードルは、人工的なシードルと比べものにならない」彼のシードルはまさに職人のなせる技なのだ。
また彼は、シードルの辛口にこだわりを持つ。「もともと昔のシードルは、甘口と決まっていた訳ではなく、その年の発酵具合によって『甘口』、『辛口』とバラバラだった。むしろ、辛口のシードルの方が主流だったはずで、今のグルメでもてはやされているデザートとシードルというような組み合わせではなく、本来食中に飲まれるべきものだった」
彼は、シードルを昔ながらにナチュラルで作るには、辛口か中辛口が一番適していると考える。 実際に飲んでみると、彼は「クセがある(笑)」と言うが、言うほど強烈かというとそうではない。確かに普通のシードルと比べ ると独特の風味があるが、重みがあり味があり、個性という面ではリンゴサイダーのようなシードルではなく歴としたお酒だ。ガチンコのペイザン(田舎者)が作るこだわりのシードル。第一印象で好きになるシードルと言うよりも、ジワジワとクセになりやめられなくなる味。「シードルはジュースみたいでちょっとなぁ・・・」なんて思っている人にぜひオススメしたい逸品!
《 輸入元資料より 》