Jean Michel Stephan ジャン・ミシェル・ステファン
シラーの原種『スリーヌ』のコート・ロティ
フィリップ・パカレやマルセル・ラピエールと同じ理念を持つコート・ロティの小規模生産者。この地に本来植えられていたとされるシラーの原種スリーヌから偉大なコート・ロティを造る。
「コート・ロティ」には著名な2つの丘「コート・ブロンド」と「コート・ブリュンヌ」がある。「ジャン・ミッシェル・ステファン」はその両方に畑を所有する。
『結晶片岩、片麻岩主体。フランスで最もきつい傾斜と言われる畑。ワインは硬くシリアス。シラーの重厚さはなく、ブルゴーニュのよう』
ブルゴーニュの「フィリップ・パカレ」やバローロの「カヴァロット」も一番偉大な産地と評する「コート・ロティ」。厳しい環境だが偉大なワインが産まれる。見落としてしまいそうな小さな看板が掲げられた醸造所。元は果樹栽培を行っていた父親が収穫した果物の保管庫として使っていた小さな倉庫だった。中には中型の発酵槽が6つだけ。ボジョレーの醸造学校を卒業した「ジャン・ミッシェル」 が家に戻ったのは1991年。生物学と農学を元にこの地でワイン造りに挑戦している。
『今のワイン造りに行きついたのはマルセルの影響。ジュール・ショヴェに学んだことをマルセルに具体化してもらった』
急斜面での作業は一部馬による作業を行う他は全て手作業。化学薬品は一切使わない。本当に必要な場合はボルドー液と硫黄のみ使用。
『2013年、周辺のビオディナミの造り手は10回以上ボルドー液を散布した。僕等は2回だけ。必要最小限に抑えている』
シラーの原種スリーヌ
「コート・ロティ」ではシラーに20%まで「ヴィオニエ」をアッサンブラージュすることが許されている。彼等は一部の畑で伝統的に「ヴィオニエ」が混植されているが最も重要な畑では単一で醸している。
『僕等にとって最も重要なのが、この地域で「スリーヌ」と呼ばれるシラーの原種』
80年前までは「コート・ロティ」には僅か70haしか葡萄畑が無かった。その後、この土地の品質の高さが脚光を浴びた途端、一気に葡萄畑は200haまで拡大された。その際に多くのシラーが植えられたのだが、そのほとんどが南ローヌのシラーに由来するクローン。凝縮度が強く色調も濃い。
『元々この地に植えられていたシラーはスリーヌと呼ばれ、南ローヌのシラーに比べて色調は薄く、凝縮感はないが繊細さがあった。ピノ・ノワールにも通じる個性があった』 彼等はこのスリーヌに拘りを持っていてキュヴェ「コート・デュ・デュバン」はスリーヌ100%になっている。
『スリーヌ100%で収量は15〜20hl/haと低い。36カ月木樽で熟成。濾過及びSO2の添加はなし。ジュール・ショヴェの考えに基づいて造った』
現在は畑をメタイヤージュ(借りる)しているので難しいが、新しく植樹する畑はボジョレーの苗木屋から購入したマサルセレクションによるスリーヌのみを植えている。
セミ・マセラシオン・カルボニック
醸造は「セミ・マセラシオン・カルボニック」を採用。収穫時から瓶詰め時まで亜硫酸を使用しないで醸造する為。
『セミ・マセラシオン・カルボニックはテロワールを表現できないという人がいる。僕のワインを飲んで欲しい。テロワールでしか説明がつかない違いだ』
■コート・ロティ : 異なる6区画の葡萄を使用。228Lのアリエ産の木樽にて12ヶ月の熟成。シラー(クローン)90%、ヴィオニエ10%
■コート・ロティ コトー・ド・バスノン : コンドリューに近い1.3haの区画。片岩と花崗岩を多く含む土壌。スリーヌ60%、シラー40%に少量のヴィオニエ。SO2無添加。
■コート・ロティ コトー・ド・テュパン : 醸造所裏手の急斜面のコトー・ド・テュパン。片麻岩を多く含む。収量は15〜20hl/ha。スリーヌ100%。36ヶ月木樽熟成。SO2無添加。2011年、彼等の「コート・ロティ」はINAOの官能検査を落ち、「コート・ロティ」を名乗ることができず「ヴァン・サン・オリジーヌ」というテーブルワインでリリースされた。