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ラーチノ
L'Acino ラーチノ
ブドウ栽培&ワイン醸造を生業としてこなかった一家の出の、ディーノを始めとする3人の若者が2006年に共同出資して立ち上げたワイナリー。それぞれ農業とは全く関係のない職に就いていたが、大地に向き合う仕事をしたいと常々考えていた3人、ワインを飲むことはもともと好きだったが、カラーブリアのワインを好んで飲んでいたわけではなく、どちらかというと他の土地の大地に敬意を払いながらブドウを育てワインを醸す造り手のワインに魅せられることが多かった。自分たちの土地でもこういった表現力のあるワインを造ることができるのではと考えるようになり、土地を買い、開墾しブドウを植え、古い樹齢のブドウを植わる区画を借りてワイナリーとしての活動をスタートする。どのブドウ畑も、豊かな自然ないし“ドーピング”に頼らない農業を実践する様々な作物の畑に囲まれていて、農薬に頼らない栽培を行う上では理想的な環境。畑ではボルドー液のみを使用し、セラーでも2酸化硫黄以外の添加は一切行わず、2酸化硫黄の使用量も年々減らす努力をしている。
今回ご紹介するカラーブリア州のワイナリー、ラーチノのディーノ(中略)、フェイスブックのメッセンジャーでコンタクトを取ってきたのですが、「Good evening Mr. Hisato!俺のワイン飲んだことある?ラーチノって言ってカラーブリアの造り手なんだけど。まあ(俺のワイン、)トリンケーロのヴィーニャ デル ノーチェやルンケット(フレイザ)ほどのものじゃないかもしれないけど。」という、それでいいのか?的な自己紹介から始まり、とある日いきなり牛の写真を送りつけてくるので「???」と返したところ、「ポドリカっていうこの地域独特な種類の牛だよ。多分君もこの牛の乳でだけ作られるチーズ、カチョカヴァッロ ポドリコは食べたことあるんじゃないかな。お肉がまた美味くてさ。放し飼いじゃないとストレスで死んでしまう牛なんだ。」
はたまたとある日には生のスカンピエビとマテガイの写真を送ってくるので、再び「?」と送ると、「スカンピとマテガイ…生の…」と返してくるので、「いや、見ればわかるけど…」と答えると、「イオニア海に面したところにある俺の友達のレストランに行った時の写真だよ。まあ、ヒサトへのカラーブリアからの招待状みたいなもんさ。」その他にもベルガモットに関するショートフィルムだとか、カラーブリア原産の豚、収穫したオリーブ、長期間のドライエイジングを施したポドリカ牛の肉、仕込み途中のサルシッチャ、そして素晴らしい環境に囲まれていることが明らかな彼のブドウ畑の写真など…変な奴だなぁとは思いつつも、この仕事を始めて18年以上経つにも関わらず未だ訪れたことのなかったカラーブリアという土地に興味を持つようになり、去年春に初めて訪れたのですが、想像以上に素晴らしい場所でした。美しく豊かな自然が残されていること、農と自然の調和具合、食の豊かさなどはサルデーニャやシチリアと似ているような気もするのですが、シチリア&サルデーニャでは感じたことのない穏やかさのようなものを人からも土地からも感じました。
お互いの共通項がワインな訳ですから、彼のワインも一通りテイスティングしましたし、畑もワイナリーを始めた時に植えた区画から2016年に植えた区画まで見せてくれたりもしたのですが、取引に関する話には全くならずにカラーブリアを後にしました。その後何度かメールのやり取りをする中で、向こう2-3年で生産量が飛躍的に増えること、そしてその量をちゃんと売り切らなければいけない状況になるという事、日本というナチュラルワインにとっては重要なマーケットである程度の割合を販売先として期待したいことなどを伝えられ、ワインのクオリティ的には全く問題なかったということもあり、取引を開始することにしました。
とは言っても、ワインのクオリティの高さではなく、ディーノ自身が僕の自説「ワインはヒトである」を体現する男だったという事が取引を決める最大の要因だったのですが…。メッセンジャーでの一連のやりとりから始まり、そして訪問中に話してくれたこと、そして見せてくれたものからも、彼がただ単に自分のワインを売りたかったのではなく、シチリアやサルデーニャと比べると知名度的にも劣るカラーブリアの偉大な伝統文化とそのポテンシャルをより多くの場所へ“輸出(伝える、知ってもらう)”したいという熱い想いがあることは明らかで、僕自身そこに強く心を打たれました。恐らくですが、ディーノが彼の友人である造り手を紹介してくれるのであれば、今後ヴィナイオータとしても積極的にカラーブリアという土地を紹介していくことになるのではないでしょうか。(輸入元案内より )