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マルセル・ラピエール
Marcel Lapierre マルセル・ラピエール
フランス自然派ワインの父、マルセル・ラピエール。
彼は「自然派」と呼ばれるワインの礎を築いた人物であり、ボジョレーをはじめフランス各地で、彼の影響を受けた自然派ワイン生産者が活躍しています。その偉大なる父は2010年の秋に突然この世を去りました。彼の早すぎる死を惜しむ声は、フランス国内にとどまらず世界中に広がり、彼を慕う多くの人々が葬儀に参列したと言います。
ヌーヴォーに代表される庶民的ワインの代表でもあるボジョレーは、早飲みでフレッシュさが特徴とされ一般的に品質を語る物ではありませんでした。しかしラピエールのボジョレーは、そのピュアな味わいと、繊細かつ濃密で、しかも熟成する事でより一層の魅力を増す、常識を遥かに越えるものであり、新しいボジョレーの世界を切り開きました。名実ともにボジョレーのワインを代表し、自然派ワインをも代表するマルセル・ラピエールのワイン。彼のワインを飲んで、真に美味しいボジョレーの存在を知り、自然派ワインの意義と、本当の素晴らしさを初めて感じたという人が日本にも多くいるというのも頷けます。それだけの魅力と実力を持った生産者であった事は、言うまでもありません。
その偉大なる父の後を継ぎ、モルゴンの地ひいてはボジョレーの地に深く根ざしたラピエール家のワイン造りを一手に担うようになったのは、マルセルの長男マチュー ラピエールです。2005年からドメーヌで栽培・醸造を担い、マルセルとともに偉大なヴィンテージも最悪なヴィンテージも経験したマチューは、周囲の心配をよそにラピエールのワインを大幅に進化させました。そのスタイルは「自然派ワインの原点」と呼ぶにふさわしい純粋で緻密な味わいで、古くからラピエールのワインを知る人曰く、1990年代初期のマルセル・ラピエールのワインのようだとか。
このマルセルからマチュー、マルセルの甥のフィリップ・パカレなどに連なる自然派ワイン生産者の系譜を辿ると、ラピエールやパカレの師匠には、故ジュール・ショヴェという学者がいます。ショヴェ氏が造っていたボジョレーは、彼らにとっても記憶に残る最上のワインであったそうです。しかしその味をただ真似るのではなく、彼ら自身の哲学によって最高のボジョレー、すなわちその土地の個性を表現する素晴らしい味わいに仕上がった時、かつてのショヴェ氏のボジョレーをふと思い起こさせる事があると言います。これが恐らく、彼らにとっての原点となる、本物のボジョレーなのかも知れません。ラピエールは、その村や畑ごとの酵母にこだわります。ワインに本当の個性やテロワールを映し出すには、とても大事なものだからです。その為に畑では出来る限り自然な農業を行い、自然環境やその中にいる微生物を大事にしています。その自然酵母によって健全なブドウを発酵させる事で、人々の心を動かすほどの素晴らしいワインが生まれるのです。
《 栽培について 》
栽培においては、その土地の個性を十分にいかす為に、化学肥料や除草剤、殺虫剤などを用いません。健全で質の高いブドウを得る為に1981年からビオロジックによる栽培を行っており、収穫においては完全な手作業を実践しています。この事は、安価で大量生産型のワインが当たり前となってしまったボジョレーにおいては、割の合わない手間のかかる作業と言えます。しかし、ドメーヌの哲学、想いを表現するためには無くてはならない重要なプロセスです。収穫されたブドウは、印象的な天井画が描かれた醸造所に運ばれ、果皮などに付着する自然酵母の働きによって発酵させます。セミ・マセラシオンカルボニックを採用し、じっくりと時間をかけて果汁がワインとなっていくのを見守ります。その後、カジュアルクラスのレザン・ゴーロワ以外のワインは古樽に移され澱(おり)とともに熟成を行います。瓶詰めは原則ノンフィルタで行われ、顧客の要望に合わせて若干の亜硫酸を添加したり、添加しないといった形で対応します。
自然派ワインの重鎮マルセル・ラピエール。
自然派のワインづくりを志す造り手たちにも多大なる影響を与えつづける彼のワインは完全に有機栽培で天然酵母のみを使用し、補糖・補酸は一切行わずに無濾過で瓶詰めされる。スタイルは自然でピュアな味わいでチャーミングながらエキスの凝縮感は完全にボジョレーを超えた造りです。
今や自然派の重鎮とも言えフィリップ・パカレの師でもあり叔父でもある彼のワインは伝説のワイン100(100 VINS DE LEGENDE (Ed° Solar annee 1999)フランスでも最も有名な超一流レストラン『タイユヴァン』のオーナー、ジャン・クロード・ヴリナ氏が30万本のワインの中から伝説のワイン100と題して全世界トップ100のワインを彼自らが著書にしている)に唯一選ばれたボジョレーでもあります。彼の教えの元、幾名もの自然派の造り手たちが巣立っていきました。
お客様によっては抜栓直後の天然酵母に由来する独特な香りが苦手と思われる方もいらっしゃるとは思いますが、抜栓後10分もすればその香りは抜けます。デキャンタージュしていただいても結構かと思います。まさにボジョレーの真髄ともいうべき1本を是非お試しください。
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