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サン・フェレオーロ
Sanfereolo サン・フェレオーロ
一つのブドウ品種への追求、ドルチェットにこれだけの愛情を注ぎ続けた造り手は、サンフェレオーロをおいて他にいるだろうか?ドリアーニの代名詞ともいえるこのブドウを徹底的に磨き上げ、昇華させた結果、唯一無二の個性を表現した。当主であるニコレッタ ボッカは1992年、念願であったピエモンテ、ドリアーニの土地にブドウ畑を手に入れ、栽培、醸造を開始する。畑は大きく分けて標高の高いサンフェレオーロ(500m)、少し下に位置するアウストリ(400-420m)、モンフォルテダルバにほど近い場所ながらも、標高は圧倒的に高く、砂質、シルトを多く含んだ石灰質土壌。この二つの特徴が、ドリアーニの土地らしさ、、、(ネッビオーロではなく、ドルチェットに適していることの裏付け)ともいえる。
ルドルフ・シュタイナーの人智学を学んできたニコレッタにとって、畑との関わりは当然の如く自然環境を重視したものであった。90年代より段階的に有機栽培へと移行し、2000 年代初頭にはビオディナミ式の栽培に完全移行。農薬や化学肥料はもちろん、銅や硫黄についても極力使用しない栽培を徹底している。また、サンフェレオーロのドルチェットは平均樹齢50年を越えるものばかり(区画によっては70年位所の場所も少なくない)そして、この樹齢の古いドルチェットは、現在のように量産化、画一化されたクローンではなく、古くよりドリアーニに残るクローン(セレクションマッサールによるもの)であり、プロヴィナージュやピエディフランコ(自根)のまま残る樹も少なくはないという 事実。結果的に、一般的なドルチェットの特徴と異なり、結実する粒は小さ く、果皮も厚い、なんとも個性を持ったドルチェット。収穫する時期も周囲と は 1 か月以上遅く10月末、年によっては11月に至ることも少なくない。
一般的にネッビオーロに比べ成熟が早く、収穫が早いと言われるドルチェット。「どのような環境でも栽培できる」、「タンニンが少なく、酸も弱い」、「決して偉大なワインは造られない」、、、そうしたイメージが付きまとうのも事実。しかしながら、「ドルチェットの果皮は、タンニンをほとんど持っていない。しかし決して少ないわけではないの。ドルチェットのすべての要素は果皮ではなく種子にある。」そう話すニコレッタ。
ニコレッタにとっての完熟は、果皮でも果実の糖度でもない。果実としての本来の役割ともいえる「種子の熟成」こそが最大限の目的。よって収穫を決めるのは種子が完熟するかどうか、、、それを目指した結果、収穫時期は遅くなり、樹上にて進む熟成、、、。果実はしぼみ脱水まで始まるほどの熟度に達したドルチェットの光景は、錚々たるものである。(輸入元資料より抜粋)
畑では農薬や化学肥料、堆肥さえも用いない栽培を行っている彼女。基本樹齢がとても高い畑ばかりなので、土地、環境からバランスをとり、樹の負担を減らすための栽培を心がけているニコレッタ。少しでも長く樹が生きられるように、必要最低限の手入れと、細やかな観察、、とても大変な仕事です。畑をぐるっと回ったあとカンティーナへ!入った瞬間に目を奪われる、猛烈な存在感を放つ大樽。
彼女が思い描くワイン造り。畑同様、半端な覚悟ではありません。ドルチェットというブドウ、元来地元では日常的なワインとして扱われている。果皮が弱くタンニンが少ないブドウ、、裏を返せば「ネッビオーロのような可能性を持っていない」とされてきたわけでして、、、。長く熟成させることはおろか、手をかけずに早飲みとして扱われてきたドルチェット。「もちろん、その考えが間違っている訳ではないの。ただ、言い切ってしまう事でドルチェットにそれ以上の力がないと決めつけてしまっているという事実。表現しきれていないもう一つの表情を見てほしいの。」そう話すニコレッタ。
確かに果皮は弱くアントシアニンやタンニンはとても少ない、しかし種にはとても豊富なタンニンと酸が存在している(果皮とは性質が違いとても丸みを帯びたタンニン)。特にドリアーニという特殊な環境(標高、気温差)であれば、温暖なアルバ周辺とは違い、早熟のドルチェットでさえさらなる段階まで踏み込んで果実を成熟できる。「果実としての完成は、果皮でも果肉でもなく、子孫を残すこと、つまり種子の成熟にあると思っているの。種子の完熟を待つことで、種から十分な、しかも質の良いタンニンを得ることができる。」一般的なイメージからさらに2〜3歩踏み込んだドルチェット!そしてその個性を120%表現するためのアプローチ!これこそがサンフェレオーロなんです。
先ほどのフェノッキオの大樽と共にドルチェットの醗酵に使っている大樽。効率ではなく「時間」と「手間」ゆっくりと築きあげられる果実の奥行きを表現するためには必要不可欠なものだとニコレッタは言います。極限まで成熟した果実、梗は色づき樹上にて脱水が始まり、部分的にはしぼんだレーズンの用な状態にまでたどり着いたドルチェット。果皮と共に開放式の大樽の中でゆっくりと醗酵が始まります。果皮はもちろん種子からも最大限に抽出するため、3週間にも及ぶマセレーション(果皮浸漬)。果皮と種子の要素を全て出しきった状態のワイン。強すぎるタンニンと色素を和らげ落ち着かせるために、大樽にて熟成を行います。この手法、ドルチェットで言えばとても特殊かもしれませんが、ピエモンテの最もクラシックな手法、バローロの醸造と全く変わらないんです。「ドルチェットは可能性が少ない、、しかしそれはアルバや他の地域での話。これほど寒冷なドリアーニで、同じ固定概念で見ても素晴らしいものは造れないでしょ?考えついた全てを追及した結果、やはりバローロにたどり着いたのね。」
そして何よりも凄いと思うのが、彼女がワイン造りに費やす時間。強いタンニンを和らげるために、大樽で2年、ボトル詰め後も4年以上熟成期間をとっている彼女。今年離陸された2008、、、。収穫からリリース迄になんと7年!!今はバローロでさえ5年のサイクルだというのに、、汗。しかもニコレッタ、ドルチェットがそれだけの時間を経ても、全く枯れない。むしろそれ以上の時間を越える事ができるということを、証明するために、それぞれのヴィンテージを十分にストックしているというんですから。
樽の奥、壁一面に並んだストックの山、、、。彼女のカンティーナはどこも一面!熟成中のボトルで埋め尽くされています、、、汗。 彼女の考えるドルチェットへのこだわり、ほんの少しでも伝わりますとうれしいです。ドルチェットの地元での扱われ方やイメージがどういうものなのか、それはよくわかっています。だからこそとでも言うのでしょうか。畑の環境はもとより、樹の個性、樹上での完熟、そして最大限の抽出、それに対して十分な熟成期間、、。これほど迄にドルチェットというブドウだけを追求している造り手は他に出会ったことがありません。
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