ジャン・フィリップ・パディエ
ゴビーでの経験を活かして2003年に独立した「ジャン・フィリップ・パディエ」。カルスの5人のギャングと称される中 でも最も独特でカルスらしいワインを造る。各評価誌でも最高評価を受けている。
カルス=石灰岩:
スペイン国境に近いペルピニャンの町から北西に山 道を 1 時間走った先、モーリーの手前に人口 200人の小さな田舎村「カルス」がある。 スーパーマーケットが1軒、バールが1軒。床屋は 無く、移動式の床屋が月に 1 回ペルピニャンからや ってくる。 何でもない田舎の村だが、ヴァン・ナチュールにとっ ては至宝の村と言われる「カルス」。偉大な造り手が 5人もこの村に集まっているのだ。
『カルスの名前の由来は土壌に含まれるチョークからきている。名前の通り、石灰岩が豊富なので暑く、 乾燥していてもワインに優雅さを与える』。カルスの 5 人のギャングと呼ばれる偉大な造り手が 「ゴビー」「マタッサ」「オリジン」「ピトン」、そして「ジャ ン・フィリップ・パディエ」。 彼等がカルスでワイン造りを始めたのは偶然ではなく、 優れたテロワールが存在するから。
『良質の石灰岩があり、年間降水量は 500ml 程度 と日照に恵まれている。更にトモランタン(強風)に よって乾燥していることも自然栽培に最適』。また、ブルゴーニュ等の有名産地とは異なり、法規 制が緩く、造り手達が個性を出しやすいのも素晴らし いワインが生まれる下地になっている。『土壌は灰色粘土石灰土壌が主体で花崗岩、シス ト、砂質が混じり合っている。複雑な土壌だが古樹 なので根が良質の石灰までとどいている』
当主であり醸造家の「ジャン・フィリップ・パディエ」は ブルゴーニュで育ったが、先代までは南西部ガイヤ ックに住んでいた。『ガイヤックの至宝ドメーヌ・プラジョルを飲んで初めてワインで感動を覚えた。すぐにワイン造りの道を目指し始めた』。20代前半、モンペリエで醸造学を学び、葡萄栽培 に関しても学んだ。卒業後、モーリーの老舗「マス・ アミエル」で働き、実際のワイン造りを学ぶ。
『2001年から2年間はジェラール・ゴビーの下で醸造責任者として働き、実際のカルスでのワイン造りを経験した』。その後 2003 年、ジャン・フィリップ・パディエとして独 立。カルス周辺の畑を徐々に買い足し、現在では 30 区画以上、18ha の畑を所有している。
『土地の味のするワインを造るには栽培から醸造、 全ての行程で正しい判断をしなくてはいけない。樽 毎に正しい判断をするにはこの規模が限界』。「マタッサ」や「ゴビー」等、他のカルス周辺の造り手 達のワインは少し重厚なワインが多いが、「パディエ」 は全く重くない。ミネラルのワイン。
畑は有機栽培をベースに数ヶ所の畑から徐々にビ オディナミを導入している。畑に合わせたケアが重 要と考えていて極端な変化は求めない。『カルスの自然を感じることができるワインが理想。 石灰岩のミネラル。ガリーヴやハーブの香がワイン に現れるべき』。樹齢は 40〜90 年までとかなり高めの樹齢。
『樹齢が高まらなければ葡萄樹は個性を表現できない。グルナッシュは太陽。カリニャンは地球の味わいを持っている』。伝統的混植混醸の畑も積極的に残している。熟度、 酸度、糖度の成熟度が違う葡萄が混植混醸することで自然とバランスをとる。 彼のワインは酷暑の南仏とは思えない軽さがある。 これは梗や種子、果皮の扱いで苦味やフレッシュさをワインに与えているから。『過度な抽出を避け、発酵前に低温浸漬をすること。 それと果皮や梗を使うことで苦味やフレッシュさ、スパイシーさをワインに与えることが重要』 (輸入元資料より)