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アンゴル・ダミグ
Angol d`Amig アンゴル・ダミグ
エミリアロマーニャの重要な古代都市モデナ。この歴史と伝統が複雑に刻まれ続ける町に、また一つ新たなワイン生産者が誕生しました。2013年、若干30歳にして自らのカンティーナを立ち上げ、当主となったマルコ・ランゾッティは学生時代、自分の大学の学費を稼ぐためにモデナのチェントロにあるナチュラルワイン専門のトラットリアで働いていました。初めは単なるバイトだったカメリエーレの仕事でしたが、本来の学業とは全く違った魅力的な仕事を経験。加えて初めて飲んだ自然なワインという飲み物の世界にどんどんとのめり込んでいきました。
地元エミリアの生産者をはじめとした魅力的なナチュラルワインにハマり、休みの度にカンティーナに自主的に手伝いに行き、様々な生産者の生き方や自然との対話の仕方を学び体感していきました。チンクエ・カンピ、ラ・ストッパ、カデノーチ、ヴィットリオ・グラツィアーノetc、、、多くの生産者の元を訪れ彼らと時間を共にしているうちに、これが自分の生き方なのでは無いか、、、とマルコは感じはじめましたが、残念な事に彼には、畑となる土地もカンティーナも全くあてはありませんでした。
そんなある日、トラットリアのオーナーの紹介で地元で何十年も自然農を営んでいるアルベルトんと出会いました。そこで独自の自然農業を営んできた彼の自家消費用ワインを飲ませてもらったマルコ。その家庭用にのみ醸造された一本のトレビアーノ・ディ・スパーニャから感じた凄みと偉大さに、この土地のワインを作りたい!この土地のブドウと向き合いたい!と強く感じたそうです。その凄まじい熱意と情熱に押されたアルベルトは、この豊かな自然環境を絶対に壊さず、何があっても守り抜く事を条件に、その全てをマルコに託す事にしたのです。
畑は全部で2.5haを所有しており、ほぼ平地で海抜は30mほどしかありません。これまで一貫して自然な環境下の元で、様々な農作物の栽培が行われてきた土地には、ランブルスコ品種であるソルバーナやグラッスパロッサ、その他トレビアーノ等が「植樹してある」というよりは、「森に生えている」という表現に近い環境を感じます。通常は背の高い草木、木々と一緒に栽培する事は、ブドウに対するあらゆる病害や成長環境に支障が起こると言われていますが、彼の畑ではその自然すぎるほどの自然の濃さが、その一般論を寄せ付けません。大切なのはビオディベルシタ【ビオ=生命、&ディベルソ=多様性・違いのある)】ありとあらゆる生物、命と命の交わりが、ワインの味わいに凄まじい程の複雑さと折り重なる旨味を持たせます。昆虫や微生物をはじめ、全ての生き物が土地を柔らかく耕し、栄養と酸を多く供給する事がとても重要で、その一部分としてブドウが生きている、そんな環境の畑なのです。多種多様な雑草の他、自然のハーブや果樹、どんぐりなどの木々も自然に自生しており、その強く奥行きのある「素晴らしい畑の香り」が心地よく流れています。
「ビオディベルシタの行き着く先は森である」
畑では農薬や化学肥料は勿論、有機肥料やたい肥も使用しません。ビオディナミ農法に準じた500番、501番の散布を行いますが、特にビオディナミカレンダーに沿っての作業は行いません。全てはブドウ次第、答えはいまその時、目の前にしかない。一つ一つのブドウ樹と房、粒と向き合い、そこの生まれた命を汲み取る事こそがマルコのブドウ栽培。自分の作るワインは二度と同じ味になることは絶対にない、それが自分の目指す農業だと彼は強く語ります。醸造は知り合いのカンティーナの一部を間借りし、細々と行っています。収穫は地元の障害者の方々を雇い、細かく真面目な作業を行ってもらっています。全てを手作業で行い、一部のワインにおいては手除梗も行う手間のかけ方、、、とにかく丁寧にブドウを摘み取ります。収穫後は、発酵前に1000kgのブドウに対し5gのSO2を添加します。これは、自然酵母を均等化・平均化する意味があり、ある特融の強い香りを発する酵母や強すぎて存在が大きすぎる酵母を「消したり殺したり」するのではなく、ほんの少しだけ「おとなしく」させる効果があると考えてるマルコ。ほんの少しのSO2がブドウを安全に保護し、酸化や腐敗から起こるネガティブな香りから守ってくれると考えています。それ以降は発酵や熟成の全ての段階でSO2の添加は一切行わず、滓引きも自然なデカンタージュのみとし、フィルター作業は一切行いません。
それぞれのブドウによって流動的に作り方を変えている為、一貫した決まりがないのが彼のワイン作りの特徴です。育ったブドウと向き合った時、自分に溢れてくるイマジネーションに任せ、その時に出来うる最高の仕事をする。それが彼がいままで多くの生産者から教わり、学び、たどり着いたワイン作りの考え方なのです。またマルコは地元に伝わる古い品種を作り続ける事も自分の指名と感じています。
特に栽培が難しいとされている白ブドウ、トレビアーノ・ディ・スパーニャ。このブドウは房の中で粒がまばらに付き始める事で、房間に隙間が出来なかったり出来すぎたり、粒の大小もとてもバラバラに成熟するという特徴があります。その影響もあり病害にとても弱く栽培が難しい為、近年生産する農家が激減していきました。しかし味わいは酸が非常に高く、骨太な厚みのある果実味が特徴的でとても素晴らしい余韻を持つ品種です。ただ、何事も無く普通に収穫出来たとしても一般的なブドウと比べて6割ほどの収穫量になってしまう事を考えると、それだけでもこの品種から手を引く事は納得の考えとも思います。しかしマルコはさらに手間とリスクを負って、このスパーニャの味わいのポテンシャルを極限まで高めようとしました。それは「手除梗、無圧搾」 信じられない造り方を施しました。これが彼のイマジネーションによるワイン作り。設計図で組み込むのではなく、今その時、目の前にある果実をどう導くか。このスパーニャを始め、この土地に伝わるブドウ作りに拘り続ける理由。それは、そこにあり、生きている命の表現の為です。
アルベルトのワインを飲んだ時の感覚は、まさしく土地と生命のエネルギーそのもの。自分がそれを表現するためには何をすべきか、どう考えていくべきか。彼のワイン作りに決まりはありません。ブドウが出来る前にどういうワインに仕上げるか決めることは絶対にありません。目の前にある命と向き合い、その命との対話を通し、自分のイマジネーションで勝手に動く事、それが彼のワイン作りです。アルベルトが長い時間をかけて育て、守ってきた素晴らしい最高の土地と、その想いに惹かれ辿り着いたマルコ。彼らの二人の高い志が、アンゴルダミグのワインの美味しさの全てです。(輸入元資料より)