Laurent Saillard ローラン・サイヤール
トゥールの東、ロワール川の支流にあたるシェール川を左岸に沿って 60 km ほど進むと、陶器で有名な町サンタニアンが見えてくる。そのサンタニアンのちょうど手前の小さな村マレイユから隣村プイエにかけて、トゥーレーヌワインの老舗クロロッシュ・ブランシュの敷地が小高い丘の一面に広がる。ローラン・サイヤールの畑は、このクロロッシュ・ブランシュの敷地内にあり、ワインは現在ノエラ・モランタンの醸造所の一部を借りて仕込んでいる。この地域の気候は、夏冬の寒暖の差が激しい大陸性の気候とシェール川がもたらす複雑なミクロクリマが互いに影響し合う。
現オーナーであるローラン・サイヤールは1991年、20歳の時にリヨンにあるポール・ボキューズの専門学校でホテル・レストランのマネージメントを3年間学んだ。以前から海外で働きたいと思っていた彼は、専門学校を卒業後1年の徴兵を経て、1995年新天地ニューヨークへと旅立つ。ニューヨークでは、ブルックリンにあるレストラン The Bountyで3年働き、1998年マンハッタンにあるビストロBalthazarで5年間ホールマネージャとして働いた。
この頃、ブルックリンで360というビストロを経営していた友人から自然派ワインを紹介され、次第にヴァンナチュールの世界にはまりこんでいく。2004年、満を持して、ニューヨークで最初に自然派ワインだけをリストにそろえたレストラン ICI を立ち上げる。ビオのローカルな食材と自然派ワインにこだわったレストランは瞬く間に反響を得る一方で、家庭との両立が次第にうまく行かなくなり、2008年妻にレストラン経営を譲り、ニューヨークを後にする。
フランスに戻ってからは、ティエリ・ピュズラを介してビストロ L’Herbe Rouge で2週間ほど働き、その間にノエラ・モロンタンと出会う。その後はノ エラ・モランタンとクロロッシュ・ブランシュの両方を手伝いながら、ゼロから畑とワインづくりを学び、2012年、ノエラから買ったブドウで仕込んだ自身初のオリジナルワインをリリースする。翌年の2013年、ノエラの畑2haを譲り受け自らのドメーヌを立ち上げる。そして、2015 年クロロッシュの引退後の畑の半分4.5haの管理を引き受け現在に至る。
現在、ローラン・サイヤールは6.5ha の畑を1人で管理している。彼の所有するブドウ品種は、ソービニヨンブラン、ガメイ、ピノドニスの3種類で、樹齢は 30〜60年。ブドウの栽培はクロロッシュから学び、さらに独自にビオディナミも取り入れている。また、醸造はノエラから学び、彼女同様に教科書にとらわれない「フィーリング」を大切にしている。 出来上がるワインを想像しながら、マセラシオンの方法、期間、醗酵、スーティラージュ、熟成方法等、全てテイスティングを通して臨機応変に対応していく。
彼のモットーは「感性を生かしたシンプルで美しい仕事」。性格的に投げやりなことが嫌いというローランは、一度仕事を始めると最後まで黙々と丁寧に作業をこなしていく。彼の仕事の姿勢は他のビニョロン達の間でも定評があり、ワイン生産者としては新人ながら、多くのビニョロンから絶大な信頼を得ている。
仕事以外の趣味はキノコ狩りと料理。季節の素材にこだわったシンプルな料理を得意とし、今はただ料理することだけでは飽き足らず、趣味が高じて、小規模ながら自分で野菜や果物、養蜂、鶏、豚などを育てながら半分自給自足のような生活を行っている。また、彼はアメリカに住む二児の父親で、趣味以外では、数ヶ月に一度ニューヨークにとんぼ返りし、愛する息子たちと一緒に過ごすことを何よりの喜びとしている。(輸入元資料より)