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ヴァルテル・ムレチニック
Valter Mlecnik ヴァルテル・ムレチニック
フリウリ ヴェネツィア ジューリア州からイタリアとの国境を越えて、車で10分程のヴィパーヴァ渓谷にワイナリーはある。畑では、シャルドネ、レブラ(リボッラ ジャッラ)、ソーヴィニオナス(フリウラーノ)、マルヴァジーア イストリアーナ、ピネラ、メルローを栽培し、年間約12,000本のワインを生産している。
この地域は、まわりを山に囲まれたすり鉢状の泥灰質土壌で標高は50〜120m程度、細かな気候条件の違いが見られる。社会主義国家時代に政府に没収されたヴァルテルの祖父の私有地であったブドウ畑を含む土地を徐々に買い戻し、1989年にそれまで桶売りしていたワインの自家ボトリングを始めた。当初より除草剤や殺虫剤といった薬剤や化学肥料を使用せずにブドウを栽培していたが、ヨスコ グラヴナーに出会った1993年以降は彼のブドウ栽培・醸造哲学に共鳴し、それを実践している。2005年からは厳格なビオディナミの生産者ですら使用する「ボルドー液」も使わない、ブドウ栽培を開始。
ひと株ごとの収量の制限、野生酵母による醗酵、温度管理・空気調節や清澄作業を行わずに醸造し、二酸化硫黄の使用も瓶詰め時にごく少量のみと、彼らの祖先が残した伝統と自然への最大限の敬意を持って、よりブドウそのものの個性やテロワールを反映した自然なワイン造りを目指している。
(以下、前店長サノヨーコの文章もご参照ください。)
1999年ヴィンテージがワイナート誌や専門料理誌などでとりあげられ、「ブルゴーニュの偉大なグラン・クリュを超える世界一のシャルドネ」と大絶賛され話題を呼んだムレチュニック。スロヴェニアの造り手として間違いなく一番先をゆき、さらにヴィーニヴェーリのグループ全体を見渡してみても、彼ほど畑で攻めている人物はいないでしょう。
ボルドー液(ビオ・ディナミやビオの厳しい組織における認定基準でさえ使用が認められているいわば最低限の農薬)さえ2005年からは全く使用しないという、通常では考えられないハイリスクな農法を実践しています。
2メートルを超す長身でありながら、他人に威圧感を全く与えない優しいまなざし、誠実で謙虚な人柄、どうしたらこれほどパワフルなワインが生み出されるのか不思議になるほどです。
ワイン造りの経験は長いのに、グループの他の人より自社ボトリングを始めたのが遅いからか「自分はまだまだ成長しなくては」と常に控え目な態度をとり続け、決して声高に「自分のワインは〜」と主張するようなタイプではありません。その恐ろしく控え目なヴァルテルが、ちらりとのぞかせてしまう自負。特に出来の良かったヴィンテージ、実際ワインになった時点でみずからが 「間違いなく偉大な年」と判断した場合にのみ、ラベルのヴィンテージをマルで囲むのです。パッと見には気がつかないほど薄く、目立たない細い線で。
何かを加えて、足して足して膨らませていったボリューミーさではなく、そぎ落として、そぎ落として、余計なものは一切排しても、ぎゅ〜〜〜っと内側に凝縮しているミネラルや果実が、どうしたってあふれ出てきてしまうといった感じのワイン。
世界最高の素晴らしいシャルドネのひとつ…とは評されても、彼のシャルドネのようにピュアでストレートな味わいも感じられるワインはその他の世界最高のシャルドネの中には見つけられないでしょう。