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ニコラ・ジョリー
Nicolas Joly ニコラ・ジョリー
"クーレ・ド・セラン"は、ロワール河の北岸のサヴニエール地区にシトー派の修道僧によって12世紀に植えつけられた由緒ある畑です。以来800年以上もの間葡萄栽培が行われ、その歴史の中でルイ11世、14世、女帝フィーヌ女帝がこの地を訪れたという記録も残っています。また美食の大家・キュルノンスキー氏 (1872-1956)は"イケムに並ぶフランスの5大白ワインの1つ"と評するほど。
1962年よりジョリー家が単独所有していますが、フランスのワイン批評界で最も権威ある2006年版ル・クラスマンでは★★★の最高評価(フランス全土でも39ワイナリーのみ)を受け、その名声を高めています。ロマネ・コンティやシャトー・グリエと共に、生産者名がそのままAOC名で、なおかつ単独所有という数少ない生産者のひとつ。
詰まっているモノが違いますので若飲みすると今ひとつ理解しにくいですが熟成したクーレ・ド・セランの古酒は本当に偉大な白ワインです。とんでもなく複雑で濃密。オークに由来する濃さがあるわけではないのですが静かながら、ぐんぐんと果実の凄みが出てくるとでも申しましょうか・・・。
「永遠に熟成しつづける」と言われるのを物語るように、若いヴィンテージのワインなどは抜栓1週間は味わいがへたれません。
クレ・ド・セランはシトー派修道僧により12世紀に植えられた由緒ある畑で、以来800年以上もの間ブドウ栽培が行われています。1962年からジョリー家が所有し、1976年に現当主であるニコラ・ジョリー氏が運営に参加。ジョリー氏は「美味しいワインである前に、その土地固有の繊細さを表現した本物のわいんでなくてはならない」と、1980年から部分的にビオディナミを導入し、1984年からすべての畑でビオディナミを行っています。
2001年、ジョリー氏はビオディナミの団体「Return to Terroir」を創立、12カ国、約150生産者がこの団体に所属しています。また、彼はこの団体を通し、世界中で講演し、原点へ回帰を提唱しています。
クレ・ド・セラン、クロ・ド・ラ・ベルジュリ、ヴュー・クロに畑を所有。1984年からすべての畑でビオディナミが行われています。ドメーヌでは牛や羊などを飼い、イラクサを始め多くのハーブを育てています。ハーブなどからビオディナミに必要なプレパラシオン(調合剤)を造り、家畜たちが畑の草を食べ、馬で耕作するなど、自然と動物と共にブドウ栽培を行っています。
自然酵母にて発酵、発酵時の温度はコントロールしません。また、デブルバージュ、コラージュは行わず、主に古樽で数ヶ月間熟成後、瓶詰め前にフィルター処理を極軽く行います。
当主のニコラ・ジョリーはとにかくパワフルで好奇心が旺盛な人だ。取材やセミナーは時間内で収まることが少ない。彼の好奇心がドンドン膨らみ、相手に伝えたいことが次々と湧き出て、話題があちらこちらへ飛んでいく。
彼のビオディナミのセミナーは一見難しく思える。現代に生きる私たちにとって、自然の法則を身体で実感する機会が減ってしまったことと、彼が少しでもビオディナミを知って欲しいと、幅広い多くの情報を伝えようとするからだろう。しかし1対1で話を聞くと、実はシンプルだ。化学的なものを使いバランスを崩してしまった自然のバランスを取り戻すこと。そしてその場所で育った植物や動物の力を借りて、バランスを高めてあげること。
決して現実離れした話ではなく、非常に論理的だ。前職は金融マン。様々なファクターを収集、分析し、実行していく。ワイン造りでもそれは行われている。そして、そこに自然への愛情がプラスされているのだ。
彼のワインもまた、「難解ワイン」と言われることがある。私も最初はそう思っていた。しかし、難しいという周囲の評価やワインとはこういうものという定義に縛られていただけだった。確かに、早めに抜栓したり、デキャンタしたりしないと開いてくれない。でも一度姿を見せてくれると、パワフルだと思っていたワインが様々な料理と優しくマリアージュしてくれる。なんと包容力と穏やかさを持つワインなのか!
彼と会う時、彼のワインを飲む時は、あせってはいけない。じっくりと向かい合うため、長い時間を用意しておこう。きっと心を開いてすべてを見せてくれるはずだ。そして、その包容力に、いつの間にか心地よい気分にさせてもらっているだろう。
来日すると人気が高いため過密スケジュールとなるが、それでも移動や休憩の間も話し続け、「これで60代後半とは」と圧倒されてしまう。(輸入元資料より)