Perillo ペリッロ
1999年に初めて元詰めを行った新しい造り手ですが、初ヴィンテージから専門誌のタウラジ特集においてマストロベラルディーノ、カッジャーノ、モレッティエーリというトップ生産者と肩を並べる評価を獲得して話題を呼びました。
私もその当時から扱っており、勿論ワインも飲んでいたもののさほど強い感銘を受けなかったのですが、今回新たな輸入元に扱いが変わり、社内試飲で久々に飲んであまりの美味しさにびっくりさせられました。
濃さだけではなく、つつしみ深さを備えて上品。タンニンも綺麗にこなれ余韻も素晴らしく長い。例えるなら最上級の古典的バローロのようで、同席した社長Sと「バルトロの古いのみたいなニュアンスがあるよね」と盛り上がってしまいました。
2004年だとまだまだ強いかな〜と思いましたが、ワインとして落ち着いていて十二分に美味しい!でもまだまだ絶大なポテンシャルを感じさせます。
アリアニコとネッビオーロは元々近しい葡萄だったという話もうなづけます。
標高も高く、樹齢90年以上のプレ・フィロキセラの古木の底力を感じます。新樽も用いていますが、バリックの要素は皆無に等しいほど綺麗にまとまった素晴らしいタウラージです。
ちょっとしたバローロ並みの価格となりますが、絶対にお飲み頂く価値があると断言致します!!
《以下、輸入元資料より》
恐らく世界中で葡萄が開花してから収穫されるまでの期間が最も長い産地、 カステルフランチ地区。年によっては12月の雪が降った後に収穫されることも あるという。ゆっくり少しづつと熟していく萄葡はタンニンもアントシアニンも成熟し、高い糖度と高い酸度を両立させることとなる。色々な要素が成熟し、複雑味を帯びていき、ワインは深みを手に入れることになる。
『収穫が遅いと雨が心配じゃないかって?雨季が過ぎたもっともっと後に収穫するんだよ。だから雨は全く影響ないよ』
例年11月中旬に入ってから収穫が始まるペリッロの畑はタウラジでも、そのワイン名になっているタウラジ村ではなく、更に100メートル程高い標高であるカステルフランチに位置する。標高は680メートル程度。この地域は年間を通して夜は0℃近くまで気温が下がる。昼夜の寒暖差が激しく、丘の谷間から乾燥した空気が入り込む。地中深くには岩盤が張り詰め、ミネラルが豊富でありながら痩せた土壌には樹齢100年に近い伝統的テンドーネ仕立ての葡萄樹が並ぶ。
perillo『2003年が酷暑だったって?カステルフランチは寒かったよ。収穫も11月の第2週だったと思う。ここでは年によっては12月に収穫することもあるんだ。葡萄が芽吹き、生育し熟成していく過程が長ければ長いほど葡萄は色々な資質を備えるようになる。』との当主ミケーレ氏の言葉通り、ペリッロのタウラジはまるでバローロのように力強く、しっかりとした骨格を持っている。また、特筆すべきはペリッロの所有するカステルフランチに位置する畑(3ha)に育つアリアニコの種類。コーダ・ディ・カヴァッロと呼ばれるアリアニコの原種に 近いクローンであり、その90%は90年を越す樹齢となっている。
そして90年を越す樹のほとんどはフィロキセラの害を逃れたプレ・フィロキセラの樹となっているのだと言う。コーダ・ディ・カヴァッロ(馬の尻尾の意)という名の通り、葡萄の房は通常のアリアニコよりも1.5倍程度長く垂れ下がり、果実と果実の間に隙間ができてしまう位に実なりが悪い。果実自体は小振りでありながら果皮は厚くアントシアニンも豊富。更にはブルゴーニュのピノ・ファンのように結実不良果実が1房に10粒程度入り込むのも特徴。通常のコーダ・ディ・カヴァッロの1/4程度にしか育たない結実不良の小さな果実は成熟するスピードが遅いので、この果実の色づきを待って収穫に入るのだと言う。
とにかく、信じられないくらいに通常のアリアニコと比べると果皮と比べて水分の比率が低いことになる。果実と果実の間に隙間があり山間部の乾燥した風がその間を通る為、収穫時期が遅くなり、雨や年によっては積雪があったとしてもベト病やカビに侵される事がないのだと言う。そして、アリアニコはタンニン、酸共に豊富である為、ゆっくりと樹の上で成熟していくことによりタンニンも酸も熟成していくことがワインにとって重要なのだという。何もかもが常識外とも思えるカステルフランチでのペリッロの仕事。更に驚かされるのが収穫量。
『剪定はしていない。高齢のコーダ・ディ・カヴァッロは自然と収穫量が少なくなってしまい1つの樹に1房しかできないんだ。』果実が小さい上に実なりが悪い。しかも1つの樹に1房しか付かない葡萄・・・。勿論、生産本数、生産効率は極端に落ちることとなるのは言うまでもない。※タウラジの規定が100キンタリ/haのところペリッロでは35キンタリ/haとなっている。畑では薬剤の使用を厳しく制限し、勿論除草剤も使用しない。(正確には樹が病気に対して抗体を持っていることと高地で乾燥している為病気自体が少ないのだそう)南西を向くカステルフランチの畑は棚造りにも似た昔ながらのラジエッラ仕立。(この地域では昔から伝わる仕立で葡萄樹と葡萄樹の間に他の野菜や果物を栽培していたそう。)土壌は粘土質の奥にカルシウム豊富な岩盤があり地表には白い石灰岩がところどころに顔を出している。
下草は自然に残され7月に年1回だけ刈り込みが行われるのみで基本的には不耕起が実践されている。醸造所は自宅地下に位置し大樽5つと使用済みトノーが20樽程度という家族経営のカンティーナで、畑はカステルフランチの3haの他にモンテマラーノに1haカステルフランチに近いが砂質が混じる自宅裏に0.5haを所有する。これら全ての畑が全てタウラジを名乗れる区画であり、畑毎に発酵、熟成させ熟成過程をチェックしながらタウラジにする樽とアリアニコとしてボトリングすべき樽とに分けていくというが基本的には全ての畑のワインがブレンドされる。
また、購入した畑に樹齢の古いコーダ・ディ・ヴォルペが植わっていて自家消費用に少しだけワインを造っていた。このコーダ・ディ・ヴォルペにも絶品。 カンパーニャワインの歴史はマストロベラルディーノが作ったと言って良いだろう。
アリアニコを筆頭にカンパーニャの固有品種を世界に根付かせた功績は大きいと思う。しかし、これから歴史を作っていくのはこのペリッロを始めとする小さくとも高品質に拘り本当のアリアニコの個性を追求する新しい試みの中から出てくるのではないだろうか。