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ジェラール・シュレール
Gerard Schueller ジェラール・シュレール
現在のフランス自然派ワインシーンの礎を築いたマルセル ラピエールやピエール オヴェルノワ。創世記とも呼べる彼らの取り組みを萌芽に、その思想やアプローチはそれぞれの取り組みではあるものの、結果的にその世界を大きく拓いたのが、ロワールのピュズラ兄弟(クロ・デ・テュ=ブッフ)であり、マルク アンジェリ(サンソニエール)、クロード・クルトワ、故クリスチャン・ショサール、ダール&リボ、ティエリー・アルマン、ジェラール・ウストリック(マゼル)、ジル・アゾーニ(レザン・エ・ランジュ)、故フィリップ・ローラン(グラムノン)、ディディエ・バラル(レオン・バラル)、ジャン=フランソワ・ニック(フラール・ルージュ)、アラン・カステックス(カゾ・デ・マイヨール)といった面々です。
そして、このリストにもう一人(厳密には二人)、必ず加えなくてはいけないのが、フランスの東、ドイツに隣接するアルザス地方で、固定観念に囚われず「自由な」発想でワイン造りを実践しているブリュノ・シュレールであり、その父ジェラール・シュレールです。
アルザス地方の都市、コルマールの南西にあるユスラン=レ=シャトーという村に居を構えるジェラール・シュレール・エ・フィス。昔ながらの家族経営のドメーヌで、現在ワイン造りを担うブリュノ・シュレールは、1980年代にこの家族でのワイン造りに加わりました。ブリュノの父ジェラールは、何十年にもわたって化学肥料や除草剤を用いず畑仕事を続けており、そこに才能とアイデア溢れるブリュノが加わった事で、ジェラール・シュレール・エ・フィスのワインは大きな飛躍を遂げます。
ブリュノのワイン造りにおける哲学は「自由」であること。とある時期、ビオディナミのアプローチを取り入れて畑仕事を行っていましたが、それでいて決してビオディナミの手法やフレームワークのために彼自身の発想が制限される事を望みませんでした。ブリュノ・シュレールにとっては、固定観念や権威から「自由」であることを常に求め、絶えることなく湧き上がるアイデアを実現することに情熱を燃やし続けています。
父ジェラールの時代には、この地域の慣行に沿った醸造がメインでしたが、ブリュノは、ワインへの干渉を出来る限り避ける醸造法を志向し、自然酵母による発酵はもちろん、醸造中や瓶詰め時の亜硫酸の使用を極限まで抑え、さらには年々その使用量を減らして、いくつかのワインでは瓶詰め時の亜硫酸無添加となるワインを手がけるようになります。
その他にも、「タブーは無い」という信条の下で、ジュラ地方のヴァン ジョーヌのような酸化熟成を試したキュヴェを造ってみたり、白ブドウのマセラシオン(赤ワイン醸造のように果皮と果汁を浸して行う醸し)でワインを仕込んだりと制限がありません。
我が道を行くスタイルのブリュノは、自然派ワインの試飲会にもほとんど参加することはありません。唯一の例外は、”Salon des Vins Libres(自由なワインの試飲会)”と名付けられたアルザスの自然派ワイン生産者を中心とした試飲会です。
「僕は別に(皆が言う)自然派ワインを造っているわけではないんだ。ただただ自由に、自分の感性とアイデアに従って、ブドウによりそったワインを造っているだけなんだ。」
そう、そんな彼だからこそ「自由なワイン」の試飲会にだけは加わっているのでしょう。ブリュノ本人も彼の手がけるワインたちも、とあるポイントに「留まり続ける」ということはありえません。私たち飲み手もブリュノ シュレール躍動感溢れる進化と、彼が日々生み出していくマジックのようなワインたちを「自由な心」を持って向き合っていきたいと思います。