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ステファン・ベルノドー
Stephane Bernaudeau ステファン・ベルノドー
ロワール地方、アンジェといえば皆様御存知、天才マーク・アンジェリを筆頭にピカイチのロワールワインが誕生するアぺラシオン。1999年にサロンで飲んでガツンとショックなワインに出会いました。歩いていたら急に頭に上から物が落ちてきたような「予期せぬショック」 となりました。何とその正体はマルク・アンジュリの従業員でワインを作っているステファンだったのです。彼はいつもニコニコと笑顔で我々に応対して、出過ぎる事も無く、目立たなくて感じの良い人だったのに!エーなんで???
1994年からドメーヌ・ド・サンソイエールで働いてきたステファン・ベルノドーは1972年生まれ。彼が2000年にたった0.7haですが石灰質の畑をアンジューに取得しました。そこには1910年に植えられた、100歳という超高齢のブドウの樹が植わっております。その畑の名前が「レ・ヌリソン」。びっくりするブドウがこの世に存在しておりますが、「あー醸造家として生まれたならば、1度はこういう畑のブドウでワインを造ってみたい!」とため息が出てしまう程、素晴らしいブドウの木です。エネルギーの固まりです。その畑からウルトラ拘ったシュナン・ブランを作ろう!と決心。マルク・アジュリにお願いして週5日の出勤を4日に減らし毎週水曜日をお休みとさせてもらいました。その水曜日と週末で自分の畑で自分だけの方法でワイン造りに挑戦。初年度は採算性を全く無視した、たった4hl/haの収量(信じられますか?キチガイ的な数です)のジュースを13ヶ月樽で熟成。ワイン造りはその醸造家のコンセプト。生活できるかどうかはさて置いて、味は保証付き。こんなシュナン・ブランが有ったのかと思う程、厚みが有りエレガントで豊熟でバランスの良い、非の打ち所の無いワインです。私もこういうワインを造りたいと思います。なんでこんなに収量が少ないのか? それは単純に樹齢が古いからです。でも少なすぎますよね。私も 頭の中では不思議に思っておりました。私の畑には1947年に植えたソーヴィニヨンブランがありますが、今年で64歳になります。56歳の時から面倒を見ておりますが、年々ブドウの木が死んでいきます。トラクターにひかれる事故死はまれで、ほとんどが老衰です。剪定時に亡くなったブドウを抜きますが、1年で2.5〜3%の割合です。こうやって木自身が少なくなり、その木も年齢と共にブドウの房を付ける数が少なくなるので、夏の選定はだんだん要らなくなるのです。なので100年も通常は畑を維持しません。普通の感覚だと50〜60歳が限界で、全部抜いて赤ちゃんを植えます。その方が経営効率が良いのです。だからステファンのような100年の樹齢は珍しいし維持しません。南仏ならまだしも北のロワールの普通の農業従事者の常識では考えられないのです。しかし、この 少なくても取れたブドウの厚みや豊熟さは何とも言えない味わいです。人間も年齢と共に魅力的になり経験と共に味わい深くなっていくのと一緒です。だから彼のワインは蔵出しを高くしないと経営出来ません。ha当たりの本数が少なくても基本的に畑の仕事が大幅に減るのではないのですから、手間はどんどん掛かってくるのです。ワイン造りはその醸造家のコンセプト。経営的な事はさて置いて、味は保証付き。こんなシュナンブランが有ったのかと思う程、厚みが有りエレガントで豊熟でバランスの良い、非の打ち所の無いワインです。私もこういうワインを造りたいと思います。