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ファットリア・ディ・カスプリ
fattoria di Caspri ファットリア・ディ・カスプリ
かつてはここにエリアーノ・カスペーリオ将軍の住居が残され、その名が地名に冠せられた。1800年代に修復されたその住まいに度重なる修復が加わり現在のカンティーナとなっています。トスカーナの風景をこよなく愛し、地のワインを尊重するオーナーはスイス出身のジュエリーデザイナー。近代化によって、この風景に変化の兆しが多くみられ、それに対するオーナーの嘆きから始まったワイナリーといえます。ワインを造るために新しく土地を購入して開墾する生産者は「景観」を無視し全てをワイン畑にしてしまう傾向があります。金銭面、また限られた面積からの収穫でワインを醸造するしかないため、それはある意味仕方のない行動かもしれません。自然に敬意を払い、ワインの伝統を守り、純粋なワイン醸造を貫くことを信念としています。最大限にその意思を理解し、懸命に行動してくれる人物が必要でした。そこで選ばれし人物がベルトラン・ハブシンガーだったのです。
彼は、もともとソムリエとして働き、アルザスの名醸造家ジュリアンメイェ(個人的に好きな生産者です)でも働いた経験豊富な逸材だったのです。それと同時に、彼の醸造スタイル、ワインをオーナーは好み、彼に畑管理や醸造をすべて任せることにしました。彼の性格は奔放的。オブラートで包んで話すことがなく、何でもストレートに言い放つため敵も多いかもしれない(誤解されやすいかもしれません)。畑とワインのことに限っては中途半端な事を極端に嫌います。人為的なことを排除していく中で葡萄樹が自力で育ち、持続的に生長する手助けをするのみです。
17ha以上の土地を所有しているものの、畑は僅かに7haのみ。自然の景観を損ねないように非常に気にかけています。より優れた土壌(区画)だけで植樹・栽培するのみと考えているからです。土壌は火山性の片麻岩で、シリカや砂を多く含み硬いシスト性もあって隣に接するキャンティ・クラッシコ地域とは非常に異なり、Ph値が高めのアルカリ性。ビオディナミでありながら、それに対して懐疑的であったりもします。全ては葡萄が地中で自力生長することを望み、数年ごとに仕立てを変更し、樹々を強くしたりします(コルドーネからギュイヨにしたり)。 それを実践するには綿密な土壌調査と知識が必要になります。彼らの畑は、森の中に点在する状態で2006年にはビオディナミの認証取得。畑で使用する 自然堆肥も自らが造り、畑に生育する豆類、クローバーなどの草、ブドウ粕やロバの糞を発酵させています。それによって自然循環型の堆肥ともなり、土壌に必要な窒素、リンなどが補給されます。この堆肥も数年に一度だけ必要不可欠な区画においてのみ使用するにすぎません。
様々な品種を栽培していますが、基本的に赤はサンジョヴェーゼとチリエジョーロ。その他では、シラー、ピノ・ネーロ。白ではトレッビアーノやマルヴァジーアが多い。ベルトランが他者のワインを飲んだ時に興味をそそられた品種も少量ずつ試されています。赤ワインは、畑、樹齢差、最終的な熟成期間の差はありますが、まずプラスティック樽で葡萄が圧搾され、野生酵母のみで4週間のマセレーション。開放大樽(トロンココニック)で発酵させ、古い大樽やトノー、バリックへ移され2年近く熟成させる。
収穫後から瓶詰まで一切酸化防止剤は無添加。彼の性格通り、自由奔放なワイン。しかし、そこには確固たる経験が詰めこまれているのです。どのワインも内容はとても密度が濃く、綿密な感じを受けます。彼の性格的な面も反映され、ややセンシティヴ(神経質)なタッチもありながら、がっちりとしたグリップのワインに口どけや飲み心地がスムーズであったりと。土壌特有のミネラルの存在がこのワインの軸ともいえます。トスカーナにおいても他ではあまり感じることのないテロワールの特性がワインに密集しています。