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トリンケーロ
Trinchero トリンケーロ
老舗中の老舗。
…なのに、イタリアでは誰も知らない(最近ではグルッポ・ヴィーニヴェーリのフェアーなどに参加して、少し名が売れてしまったかも)のは、ガイドブックのやり方に納得できず、一切掲載していないから。
バルベーラの造り手をひとつ、といわれれば、迷わずここを選びます。
バルベーラという品種の威力を、いろいろな角度から見せつけてくれます。
けれど、本当に評価したいのは、これほど沢山の種類のワインを(しかも安価の)造っていながら、そのどれもがしっかり個性を持っていること。
バルベーラ・ダスティの中心地にあるエツィオ・トリンケーロのワイナリーは歴史が古く、またこの地方では名の知れた大地主でしたが、エツィオの代になって現在ある最良の畑を残してかなりの土地を売却してしまいました。あまり規模が大きいと品質を追求することが難しくなる、というのがその理由です。残された畑のほとんどは50年を越す樹齢の高いものですが、それ以外の15年に満たない若い畑のワインも自家瓶詰めせず、桶売りしてしまうという徹底した品質へのこだわりぶりを見せています。
また、商品のラインナップをみてもわかるように彼らのワインはそのクリュの重要さにかかわらず、ヴィンテージの出来次第で出荷の時期にずいぶんと幅を持たせています。最古畑のヴィーニャ・デル・ノーチェであればまだしも、たとえばバルスリーナという2番目のクリュにあたるバルベーラでさえ、最良の1997年がリリースされたのはその後に続くヴィンテージより相当後になってからでした。
彼らの場合、そういったことは他の安いクラスのワインでも多々見られますが、イタリア中どこを探してもここまで徹底してワインの仕上がり状態に気をつかっている造り手は見つかりません。
アスティ県のモンフェラート地区、アリアーノ・テルメにある、トリンケーロ家は1925年よりブドウおよびワイン生産を始めた。この県で最も早く、ブドウ栽培農家による自家ビン詰めを行うための登記をした造り手(1952年)。バルベーラダスティの生産地として最良のひとつであるこの土地から、あくまでも伝統を堅持したワインを造り出す。樹齢15年以下の樹のブドウからできるワインは、自家ビン詰めをせずに桶売りをしてしまう。彼らのワインを代表するひとつであるヴィーニャ・デル・ノーチェは、1929年に植えられた樹齢70年を超えるバルベーラのある、同名の畑のブドウから造られたワインである。樹齢の高い樹から厳格な収量制限をし、長いマセレーション期間、一切の温度管理をせず、スラヴォニア産の樫の大樽で2年以上の熟成をさせる。こうすることで、ワインは20年以上の熟成にも耐えうる酒躯を持つに至る。
エツィオ・トリンケーロはイケメンで、快活&爽やかで、曲がったことが大嫌いで、正義感に溢れ、独身で、資産家で、かっちょいい車とバイクに乗り、音楽とかもやっちゃったりして、美味しいレストランにも無茶苦茶詳しくて、おまけに造るワインも美味い!全男性の敵のようなやつです(笑)。
トリンケーロは、アスティ県で一番最初にDOCワインの自家元詰めを行うための登記をした造り手で、エツィオが3代目に当たります。当初から、自然環境の最大限の配慮を払った農業を心がけ、セラーでも人為的関与を極力避けたワイン造りを理想としてきました。彼がワイナリーの仕事をすべて任された時点では40haもの畑を所有していたそうなのですが、品質の高いワインを造るのには広すぎる!!ということで、もっとも条件の良い畑10haほどを残して、他は全て売却ないし賃貸してしまいます。
残した畑の中でも最も重要な2区画が、ワイナリーに隣接した畑「ヴィーニャ・デル・ノーチェ」(以下ノーチェ)とノーチェに隣接する「バルスリーナ」という事になると思います。ノーチェ、1920年代に、バルスリーナは30年代にバルベーラが植えられた畑です。ヴィーニャ・デル・ノーチェの畑とセラーの間にある道路沿いには、クルミの樹が植わっており、通り名自体もヴィアノーチェ(くるみ通り)と言うため、その道に隣接している畑の名前にもノーチェがついています。
バルベーラが主要品種ですが、その他にもなんと9種類のブドウを栽培していて、白以外は全て単一品種でリリースさせていますので、ワイナリーの規模を考えてると、非常に多種類のワインを造っていると言えると思います。
特筆すべきは、リリースされる全てのワインが他の造り手の追随を許さないくらいのクオリティとテンションを備えているというところ。ですが、どのワインもがあまりにも普通に凄すぎるので、逆にありがたみ感に欠けてしまうのか、個々のワインに対する注目度が散漫になっている時があるような気がします。ですが、その高いレベルの“トリンケーロ・スタンダード”は、どのようにして維持されているのでしょう??答えは簡単、納得できないものはボトリングしないのです!!揮発酸が高くなりすぎたものはお酢屋さんに、揮発酸は高くないけどワインとして少しでも腑に落ちないことがあったらバルク売りをしてしまうそうで、僕が訪問した翌日にお酢屋さんが来ることになっていて、8000リットル(!!!)渡すと言ってた時には、目が点になりました…。
エツィオは、造り手としてではなく、いち飲み手としての観点から他の造り手のワインの事も正当に評価できる男だったりするのですが、自分のワインに関するコメントはというと「ヒサト、信じてくれ。マジ死ぬほど美味いから!」とか、「マンマミーア、クレイジーなくらい美味い!!」など、とても理性的とは言えないものだったりして、聞いてて思わず笑っちゃいはするのですが、彼の言う通りでなかった事など一度もなく、それもそのはずで、本当に自信があり、ボトリングを考えているものだけを飲ませてくれているわけですから…。飲み手からしたら、大変にありがたい存在のトリンケーロですが、様々な状況が重なり、ワイナリーの縮小を考えているようです。
理由1:人材確保が困難。「失業率が高い!仕事はどこにある?とか抜かしてる割には、こういう仕事には目を向けねえんだよな…。」
理由2:高齢の両親の世話に時間とテンションを持って行かれる。まあ、これは独身貴族を謳歌し過ぎた代償とも言えるわけですが…。あれほど、伝統のあるワイナリーであることに誇りを持っている割には、それを維持継続するための努力に欠けたような気も。モテなかった男のやっかみでしょうか?(笑)
理由3:これはパーチナのところで書いたこととも重なるのですが、彼らからしたら、いわれのない理由でDOC、DOCGの官能検査を落とされる。落とされること自体も問題なのですが、再検査するのにも再び書類用意したりと不毛な労力&時間が必要になる。近年、書かなきゃいけない書類の量がハンパなくなってきているようで、基本すべて自分でやらなければいけない小規模ワイナリーにとっては非常に負担となっています。
ただでさえワインを長期熟成させているので、セラーにはワインがいっぱいあるし、畑を手伝ってくれる人もいないし、諸々のルール改正もさらなる投資を強要するようなものでと、踏んだり蹴ったりなんです。大手のワイナリーにとっては、なんの問題のないことでも、小規模な造り手には大きな負担になることが増え過ぎて、本当に誠実な造り手にとっては生きづらい世の中になって行っているのを感じます。そんな彼らを将来的に助ける術があるとすれば、誠実な造り手が醸す誠実なワインが圧倒的に支持されているという、お上(政府、原産地呼称委員会など)からしてみたら無視できない状況、ムーヴメントを生み出すことが必要なのではないでしょうか??そのために僕たちができる事は、明らかですよね?
守るためには戦わなければいけない、心ある造り手の心が折れる前に…これが僕を駆り立てる(生き急がせる)一番の要素なのかなぁと思うことしきり…。 他者から頂く賛辞って、手放しで嬉しくないですか??人って、自分をフォローしてくれている人がたくさんいると思えた時に強くなれると思うのです。 世知辛い世の中で、馬鹿正直に生きている造り手達ですので、「君たちのワイン、サイコー!」って感じで声を掛けてあげてください。その声の多さ、熱量が彼らの中に貯まり貯まると、日本を出発するころには、やる気満々、「剪定、ぎゃんばるぞぉぉぉ!!!」って感じだと思います!!(笑)あ、もちろんおべっかもお世辞も必要ありません。本当に美味しいと思った時だけ、そう伝えてあげてください!!(輸入元案内より抜粋)