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エッゲル・フランツ
Egger Franz エッゲル・フランツ
膨大な知識量と創作意欲をそのまま具現化した、
オリジナリティ溢れる瓶内2次醗酵シードル
ボルツァーノからアディジェ川沿いに南へ30km、エーニャ(ノイマルクト)の町。若くから植物学者として大学に勤務し、植物を主体に自然環境、菌、酵母などを、専門的に研究してきたという異色の経歴を持つフランツ エッゲル。 1994 年に大学を退職後、父が続けてきたリンゴ栽培農家を引き継いだことを契機に、シードルの追及へ没頭していく。
アディジェ川のほとりにある彼のリンゴ畑、土地は水はけのよい砂質、粘土質(トゥーフォ土壌)。父の代までは一般的なリンゴ栽培を行ってきた。フランツは、これまで自身が学んできた知識と経験をもとに、薬品類の代わりに多種の薬草からとった煎じ液を利用することで、果樹では非常に難しいとされる無農薬、無肥料栽培を実践している。リンゴの品種も病気やカビに強い原種を選抜(1600 年代に日本より伝わったとされるヒメリンゴ系の品種からの交配、ゴルドラッシュ、トッパス)、それぞれ糖度が上がりにくい品種ではあるものの、果皮が厚く生食よりもシードルに適していること、収穫量を抑えて果実の密度を上げることで、十分な糖度とバランスを持った収穫へたどり着く。当初は試行錯誤ではあったものの、彼の推測は見事に的中し、現在は年によってごくごく微量な天然由来の硫黄物を使用するのみ、ボルドー液はもちろん銅も全く使用する必要がないというバランスの取れた畑に驚愕する。
しかしながら、元来このあたりではリンゴ栽培は多くあったものの、そのほと んどは生食用、もしくはジュースとしての需要がほとんど。イタリアでのシードル生産の大半は「輸出用」という現実がある。フランスやスペインに比べ、リンゴを醗酵させてシードルを造ること自体が「特殊」であることに間違いはない。それではなぜ、シードルの醸造を始めたのか?
「栽培や収穫にのめり込むほど、リンゴを収穫して販売するだけでは物足りないと感じてしまって、、。あくまでも果実、農産物である以上、形に残すことはできないし、自分がいくらこだわったリンゴを栽培したとしても、メルカートでその違いに気づいてくれる人は皆無だった。それに比べて、ブドウを栽培してワインを造るという行為は、果実以上の表現ができると感じたんだ。リンゴを用いて表現できるもの、形の残るものを造りたい、それがシードル造りだったのさ。」そう話すフランツ。自ら収穫したリンゴを用いたシードルの醸造、、、。当初は試行錯誤であったものの、追及心の高い彼。フィルターの使用をやめ、オリ引きの回数を減らし、オリによって原酒が守られる状態(シュール・リー)を維持する事で、完全に SO2 の添加を行わない瓶内 2 次醗酵のシードルを造りだすまでに至る。
オリとともに保管することで、原酒自体が守られる=酸化に対して抵抗を持つ、という考えのもと造られたシードル。シンプルにリンゴだけで造ったものはもちろん、リンゴと一緒に収穫されるカリン(mela Cotagna)を加えたものや、リンゴ果汁にサンブーカ(Sambuca=ニワトコ)の花を加えて一緒に醗酵させたものなど、、、彼の創作意欲には驚かされてしまう。
収穫は10月中旬〜下旬。生食用とは違い、樹上にて落ちてしまう直前まで、完熟したリンゴを収穫。破砕して圧搾した果汁は小型のタンクで20〜30日間、緩やかに醗酵を促す。醗酵が終わった段階で、別に保管しておいたリンゴジュースと微量の酵母を加えボトル詰め、瓶内にてもう一度醗酵が始まるのを待つ。酵母や醗酵中の温度については、まだ試行錯誤の段階だと話すフラン ツ。リンゴの果汁のみで醗酵しきった爽快さ、そして全く嫌みのない香りと、心地よくも繊細な味わい。
歴史や伝統にはないものの、フランツのこだわりの栽培・醸造観念によって生まれた、個性豊かな素晴らしい味わいのシードル。まだ実験段階という生産ではあるものの、ぜひとも今後の醸造、そして彼の到達点が本当に楽しみな造り手です。(輸入元資料より)